あのジャパネットがBS放送に新規参入する事情 CM収入に依存せず、通販とのシナジーを模索

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通常の放送局はCM枠を販売して収入を得ているが、ジャパネットは自社の通販番組などをCMとして放送するため、他社のCMを放送しない可能性がある。CM収入へ期待することはできず、そのため番組と連動した商品販売や通販が主要な収入源となる。

いわば、「CMを売らない放送局」を目指す方向性だ。広告の心配がない放送局は今まででは考えられないビジネスモデルとなっており、従来のテレビ局とは一線を画す存在となりそうだ。

アプリの集客力や採算性に疑問の声

しかし、本当にうまくいくのか不安な点もある。ジャパネットが掲げるテレビとアプリの融合は既存放送局でも議論され、一部では行われているが成功事例はいまだ少ない。アプリの集客力や採算性を疑問視する声も根強く、購入者がどれくらいいるかは未知数だ。通販で培った力をアプリで生かせるかがポイントだ。

もしジャパネットのBS放送局がテレビとアプリの融合に成功すれば、他社もそうした動きに追随し、新規参入の意図であったテレビメディアの活性化につながる。

小林議員は「今回のBS放送の新規参入は呼び水にすぎない」と話し、さらなる新規参入を期待しているという。事実、ディズニーの「DLIFE」と「FOX NEWS」がBS放送からの撤退を表明し、当初の想定よりも多いスロット数の削減が行われる予定だ。さらに、NHKもチャンネル数削減の方針を掲げ、1チャンネルが削減されるため、合計3チャンネル分の事業者の参入が可能となる。

「放送の新規参入は今後より広がっていく。乗り出したい会社はもう準備し始めてもいいくらいだ」(小林議員)。放送への新規参入がどう動くのか。2020年以降を中心に、すでにゲームは動き始めている。

井上 昌也 東洋経済 記者

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いのうえ まさや / Masaya Inoue

慶應義塾大学法学部政治学科卒業、同大メディア・コミュニケーション研究所修了。2019年東洋経済新報社に入社。現在はテレビ業界や動画配信、エンタメなどを担当。趣味は演劇鑑賞、スポーツ観戦。

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