トランプ大統領の再選のカギはイランではない 現時点で「世界経済への影響」は限定的だ

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中東情勢の先行きそのものより、金融市場にとって重要なことは、大統領就任以降、経済の安定成長を実現してきたトランプ大統領が2021年も続投するか(同様に、もし民主党候補が勝つなら、経済成長を重視する民主党の大統領が誕生するか)である。そして、大統領続投が成功する最低条件は、2020年も安定した経済成長とインフレが続くことだ。

筆者は2020年のアメリカ経済に関して、昨年11月30日コラム「トランプが2020年大統領選で優勢と読む理由」でも述べたが、2019年に緩和方向に転じた米連邦準備制度理事会(FRB)の金融緩和の後押しで、2%前後の安定成長と一段の失業率低下を伴う雇用拡大が続くと予想している。民主党の大統領候補者が誰になるかは現状全く分からないが、経済安定化政策の成功を通じて、トランプ氏は大統領選挙に勝利すると想定している。

2020年もFRBの金融政策が経済成長を左右する

2020年の財政政策は若干経済成長率を押し上げる程度で、2019年に続いてFRBの金融政策が経済成長を左右するツールになるとみる。2019年は素早い利下げ転換、その後秋口からのバランスシート政策転換でベースマネーは再び拡大している。これらの金融緩和政策が波及して、2020年の家計・企業の支出性向を高めると予想する。

またFRBは、早々に利下げに転じた2019年から、金融政策のフレームワーク見直しの議論を始めている。低インフレが長期化する中で、7月以降の米連邦公開市場委員会(FOMC)において金融政策戦略や枠組みに関するいくつかのテーマが取り上げられた。これらの議論を通じて、2%インフレ目標の実現可能性を高めるために「平均インフレ目標」を採用する可能性が高い。

このフレームワークの変更は2%インフレの上振れを積極的に受け入れる対応につながり、FRBは2020年後半に、インフレが高まる中で景気刺激的な金融政策を継続する姿勢を鮮明にするとみられる。そして、このFRBの政策が、経済成長を支えトランプ大統領再選を後押しすると筆者は予想している。

村上 尚己 エコノミスト

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むらかみ なおき / Naoki Murakami

アセットマネジメントOne株式会社 シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、外資証券、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。

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