トランプ大統領の再選のカギはイランではない 現時点で「世界経済への影響」は限定的だ
そして、トランプ政権の行動の背景には、大統領選挙を見据えた政治情勢が影響しており、トランプ大統領は「テロリストの親玉を殺害」と成果をアピールできると判断した可能性がある。なお、昨年12月に弾劾裁判が決まってから、一部調査ではトランプ大統領への支持率は年初にかけて上昇している。
中東の地政学リスクの高まりの経済的インパクトは金融市場にとって本質的に重要だが、ホルムズ海峡の封鎖などが懸念されれば、原油価格上昇を通じて無視できない影響が及ぶ可能性がある。
一方、アメリカにおけるシェール革命によって、原油を含め世界的なエネルギー市場の需給構造が変わっている。こうした環境変化が、トランプ政権の中東政策を予見し難くさせている側面もあるし、また中東へのエネルギー依存度が高い中国への圧力を高める外交政策の一環かもしれない。ただ、現段階では、エネルギーの供給ショックがアメリカを中心とした世界経済を揺るがすのはテールリスクと筆者はみている。
2020年も中国を戦略的に封じ込める政策が続く可能性
2018~19年はトランプ大統領による予見し難い対中政策が、金融市場の市場心理を揺るがしてきた。大統領選挙が行われる2020年も、中国を戦略的に封じ込める政策が続く可能性が高いと筆者は考えている。中国を中心とした各国への通商政策に加えて外交政策も、「アメリカファースト」を掲げる大統領のツールになりうるだろう。
そして、2020年前半は、民主党の大統領候補者がアメリカの政治シナリオを複雑化させる変数となる中で、今後もトランプ大統領が発するツイートなどが材料となり、短期的な株式市場の変動をもたらす主因になるだろう。年初早々のアメリカの攻撃とイランの反撃により中東情勢が緊迫化し悪材料となったことは、2020年の金融市場の姿を象徴しているのではなかろうか。
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