高円寺の「銭湯」に20~30代女子が通い詰める訳 競合は「スタバ」、公衆衛生からレジャー施設へ

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充実したアメニティグッズ(小杉湯提供)

もちろん、銭湯そのものの改善も続けている。銭湯の初心者が多くやってくることから、浴室内には入浴の作法をわかりやすく記した手製のイラストポスターを掲示した。シャンプーやリンスなどのアメニティー、パナソニックの高級ドライヤーなども備え付けられており、女性客が手ぶらで入っても困ることはない。50円払えば、旅館などで用いられる高級な今治タオルを借りることも可能という充実ぶりだ。最初はイベント目当てに小杉湯に来た若者も、銭湯の居心地のよさを知ると、足繁く通うようになる。

【2020年1月12日11時00分追記】初出時、タオルの料金に誤りがありましたので上記のように修正しました。

「ケの日のハレ」の場

平松氏は、現代における銭湯を「ケの日のハレ」の場と表現する。今の若い世代にとって、レジャーとは必ずしも、スペシャルな非日常=ハレの日を過ごすことだけではない。

むしろ、日常=ケの中で、少しだけいつもと違う暮らしを体験することに人気が集まっている。民家に宿泊することができるサービス「エアビーアンドビー」や、カフェ付きのコインランドリー、サウナなどのブームは、そのいい例だ。

そう考えると、小杉湯のライバルはもはや家庭用の風呂ではない。入浴は1回470円。カラオケや居酒屋に行くよりずっと安く、長い時間滞在し、人とコミュニケーションを取ることができる。菅原氏は、「使う金額や時間で比べると、小杉湯のライバルはスターバックス」と語る。

公衆衛生のための施設から、ちょっとした非日常を味わうレジャーの場へ。銭湯の存在意義は今、急激に転換しつつある。

印南 志帆 東洋経済 記者

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いんなみ しほ / Shiho Innami

早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者、東洋経済オンライン編集部、電機、ゲーム業界担当記者などを経て、現在は『週刊東洋経済』や東洋経済オンラインの編集を担当。過去に手がけた特集に「会社とジェンダー」「ソニー 掛け算の経営」「EV産業革命」などがある。保育・介護業界の担当記者。大学時代に日本古代史を研究していたことから歴史は大好物。1児の親。

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