高円寺の「銭湯」に20~30代女子が通い詰める訳

競合は「スタバ」、公衆衛生からレジャー施設へ

菅原氏はまず、本業を続けながら課外活動として小杉湯のオンラインコミュニティーに参加。2018年には、フィンランドの公衆サウナと銭湯のコラボレーションイベントを企画し、かつて働いていた広告代理店の顧客だったフィンエアー(フィンランド航空)に後援についてもらうことにも成功した。そこで、平松氏に「一緒に仕事をしないか」と声をかけられた。会社を辞めたことで年収は半分に減ったが、「価値観の合う仕事をしている分、幸福度は増えている」と微笑む。

菅原氏の年収は半減したが、幸福度は上がったという(撮影:大澤 誠)

菅原氏が小杉湯に入って最初に手をつけたのが、小杉湯の価値の定義だ。「小杉湯がこれまでお客さんに提供してきた価値の核は何なのか。ワークショップを開いて、平松家、パートさん、お客さんにまで聞き取りをした」(菅原氏)。

その結果出てきたのが、「あるべき姿ではなく、ありのままの姿で生きるための場を提供する場であること」。何かに悩んだり、壁にぶつかったりしたとしても、お湯に入れば「まあ、いいか」と思える。それが、小杉湯の価値の本質だと定義したのである。

3代目は銭湯の「機能拡張」を進めている

では、その価値をどのように社会に伝えていけばよいのか。1つの手段が、平松氏が取り組んできた前述のユニークなイベントだ。菅原氏は「イベントを開催することが活動のメインなのではなく、銭湯に人を呼び込むための窓口を作り、人を呼び込むための活動を続けることが重要だ」と語る。

小杉湯では、初代が設備を含めた入浴の体験を整え、2代目は入浴後にくつろげる待合室の拡張に力を入れてきた。そして、3代目の平松氏が進めているのは、いわば銭湯の機能拡張であり、社会との接点作りなのである。

「機能拡張」の一環として今年3月にオープンするのが、銭湯に隣接する複合施設「小杉湯となり」だ。1階には、お酒や食事が楽しめる飲食スペース、2階は、仕事をすることもできる書斎・作業スペース、3階は貸し切りができる個室が出来る予定だ。平松氏は「2階で軽く仕事をして、終わったら小杉湯でひとっ風呂、そのあとに1階で一杯やる、といった使い方をしてもらえたら」と期待する。

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