「英語を諦めていた人」に教えたい学習のコツ 日本語を習得したデビット流勉強法

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英語教材のフレーズは単なる宣伝文句だと思っておくべきでしょう。「雨だれ石を穿つ(うがつ)」というよいことわざがありますが、その言葉がまさに英語学習に必要な感覚かもしれません。日本人の人生観は英語学習に向いているかもしれませんよ。人生は長いのです。

3. 異なる環境に身を置くことで覚醒を促す

スポーツ選手の中には、それまでそこそこの成績だった選手が突然覚醒する、ということがあります。おそらくは、それまでやるべきトレーニングをしてきて、実力は十分にあったにもかかわらず、自分に自信がなかったり、あるいは実力に自分で気が付いていなかった状態が、なんらかのきっかけ(代打満塁逆転サヨナラホームランを打ってマスコミに騒がれたとか)でその壁を打ち破ったのではないかと思います。

語学学習においても、一気に覚醒の瞬間を迎える時があります。さっき言った雨だれ石を穿つ、の考えと矛盾するようですが、そこまでの準備期間があったうえでの覚醒ということになります。

語学学習は失格のないマラソン

私の場合、先に言った高校の交換留学の後、IUC、Inter-University Center for Japanese Language Studiesというところで1カ月間の集中講座を受けた時、さらに大学卒業後早稲田大学に来て勉強した時でした。その後も学習院女子大大学院(そうなんです、高校は男子校、そして大学院は女子大なのです)で勉強したりと、いろいろな環境に飛び込むたびに、自分の日本語の地力がついていることを確信しました。

ここで1つ気を付けたいのは、なんの下地もなくいきなり外国に行ったり、海外で働いたらそのまま自動的に外国語ができるようになるわけではない、ということです。プロスポーツ選手が毎日地道なトレーニングを行っているのと同じく、地道にリスニングなどをつづけていた場合、海外で外国語を話さなければならない環境に追い込まれた時、短期間に蓄積されていたフレーズがどんどんつながって出てくるようになるのではないかと思います。

語学学習は失格のないマラソンのようなものです。とにかく毎年挫折しても毎年リスタートするくらいの自分に対する寛容さをもって、自分のペースで気長に続けましょう。今年もこのコラムをよろしくお願いします。

デビット・ベネット テンストレント最高顧客責任者

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David Bennett

1979年にジャマイカで生まれ、カナダ国籍を持つ。カナダトロント大学大学院卒。早稲田大学にて日本語を習得、学習院女子大学大学院にて日本古典文学を学ぶ。東京でコンサルタントとして社会人キャリアをスタート。AMD社コーポレートバイスプレジデント、および同社のレノボアカウントチームのゼネラルマネージャーを務め、コンシューマー、コマーシャル、グラフィックス、エンタープライズプラットフォームなど広範な事業を手掛ける。2018年5月レノボ・ジャパン社長に就任、2022年6月から現職。古典文学が好き。

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