2020年の米中貿易交渉が楽観視できない理由 「第1弾の合意成立」に安心してはいけない
アメリカと中国の両政府は2019年12月13日、貿易交渉に関して第1段階の合意が成立したことを発表した。中国がアメリカの農産物の輸入を拡大する一方、アメリカはこれまでの発動した関税の一部について、税率を引き下げる。このほか、金融市場の開放や知的財産権の保護、為替政策の透明化なども合意に含まれるという。
また同15日に双方が予定していた追加関税の発動も今回の合意を受けて見送りなった。前日にドナルド・トランプ大統領がツイートで、合意は極めて近いと発表、続いて政府から税率の引き下げ方針などの発表があり、期待感から株式市場は全面高の展開となった。もっとも翌13日になっても中国側からは何の発表もなく、市場が気を揉む場面も見られたが、結局は現地時間の午後11時に中国が会見を開き、合意成立を正式に発表する格好となった。
アメリカ側は思った以上に譲歩した印象
今回の一連の流れの中で、いちばん印象に残ったのは、アメリカ側が思った以上に譲歩したということだろう。追加関税の見送りに関しては、かなり前から予想されていたが、これまでに賦課した関税の引き下げに関しては、米政権内でも強烈な反対があると伝わっていたし、中国側からかなりの譲歩を引き出せなければ実現は難しいのではないかと見られていた。
結局は2019年9月に賦課したスマートウォッチなどの1200億ドル分に対する15%の関税を、7.5%に引き下げるという部分的なものにとどまったが、アメリカが要求していた農産物購入の数値目標の明記や四半期ごとの検証などに関して、中国側が頑として首を縦に振らない中で、先に関税の引き下げを表明したことの意味は大きい。
合意がまとまらず時間切れとなる中で、スマートフォンやノートパソコンなどに対する15%の追加関税を発動することになれば、株価の大幅な調整は必至と見られていただけに、2020年に大統領選を控えて株価の維持が最優先事項となっているトランプ大統領が、反対意見を抑えて決断したのだろう。
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