地元の足「ローカル船」やバスで旅する愉しみ 情報の少ない生活路線にどうやって乗るか
大長はみかんの産地とのこと。みかん直売所を眺め、御手洗に向かった。
御手洗の保存地区を歩く。洋風の床屋、明治時代からの時計店。茶屋、船宿や遊郭の跡、神社、高灯籠。大正時代に建てられた木造洋館の医院はゲストハウスとなっていて、町並みの保存とともに時代の流れにも合わせて変化しているのだなと感じた。
一通り見学し、御手洗バス停から路線バスで呉線の広駅に向かった。大崎下島からは、島伝いに本州まですべて橋が架かっている。
戸惑いも楽しさも多い生活路線
このときは結果的にうまく乗り継げたが、生活路線や生活航路は、部外者が利用すると戸惑うことも多い。
路線バスに揺られて港に到着したら、待合室に「欠航」の看板が出ていたことがあった。晴天、船会社のサイトにも欠航情報はなかったが、電話で問い合わせるべきだった。
バス停が片方にしかないこともあった。そのときはバス停があるほうだったのでよかったが、運転士に反対方向のバスはどこから乗るのか尋ねると「あそこに郵便局の車が停まってますでしょう。あの辺りです」との答えだった。けれども、地元の人々が理解しているならそれでよいのだろう。
なお、欠航に出くわしたときは、その町を散策することにした。老舗の和菓子屋を見つけるなど、思わぬ発見もあった。がっかりせず楽しみに変える方向に切り替えよう。
そして船といえば、最近、岡山県の宇野と香川県の高松を結ぶ宇高航路が廃止になったことも記憶に新しい。生活航路でも、例えば岡山県備前市の日生諸島を結ぶ「備前♡日生大橋」が2015年に開通したことで、定期船の利用が大幅に減少したという。
そこで備前市は、鉄道やバスのデザインで知られる水戸岡鋭治氏デザインの旅客船「NORINAHALLE」(のりなはーれ)を発注し、運航会社へ無償貸与した。私自身、毎夏日生諸島に出かけているのだが、この船のウッドデッキからの眺めは格別であった。
もちろん橋が架かることは地元の人にとって悲願だったと思う。たまに訪れるだけの旅行者としては余計な意見を言うことはできない。18きっぷでの各駅停車の旅もそうだが、旅行者はそれぞれの土地の日常にお邪魔している、ということはいつも意識したいと思う。
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