地元の足「ローカル船」やバスで旅する愉しみ 情報の少ない生活路線にどうやって乗るか

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ここで思い出したのが路線バス(さんようバス)の存在だ。このバスは平日16本に比し土曜2本、日曜は運休で、無意識のうちに候補から外れていた。時刻を見ると、温泉を13時17分に出発するではないか。すると明石港13時28分着で先の高速船に間に合う。1日2本なのによくぞこの時間に運行があったものだと幸運を喜んだ。

かくして垂水港で11時から昼食のあと、コミュニティーバスで温泉に向かった。バスは海沿いを進み、造船所のクレーンをかすめる。大崎上島は造船の町だ。

温泉ホテル展望台からの眺望(筆者撮影)

運転士に「着きましたよ」と声をかけられ降車した。ところが、ホテルらしき建物ははるか山の上に見えるのだった。バス停の名前は「清風館入り口」。バス停で気をつけるべきは「〇〇入り口」という名前である。ほぼ冠した名称と遠いところにある。

びっくりするほどキツイ山登りのあと、ホテルに到着した。受付で「本当に息が上がりました」と思わず漏らしたところ「噂の心臓破りの坂ですよ、ふふふ」と係の男性がニヤリとする。それだけに、これまで入った温泉の中で最上位の眺望であった。青空の続く瀬戸内海の向こうに、しまなみ海道の橋梁や石鎚山、左に今治、右に松山の街が広がっていた。

ここは本当に船着き場?

路線バスはホテルの前からの出発だった。バス停は「清風館前」である。路線図によると、明石港の手前、沖浦港のあたりも通る。ここから船に乗ってみよう。折しもバスはフリー乗降可能だという。運転士に「沖浦港の近くで降ろしてください」と声をかけた。

沖浦港に到着する船。乗船場の表示は見当たらなかった(筆者撮影)

バスを降りると、観光物産館がある。乗り場かとのぞいたが、がらんとだだっ広い場所に人の気配もなく、そもそも何も売っていない。小さな桟橋を見つけたので向かうも、乗船場の表示がどこにも見当たらない。ほかに客の姿もない。

昭和の雰囲気を感じる大長港の待合室(筆者撮影)

ここでいいのだろうか。1人心細くなりながら待っていると、やがて遠くから小さな船がやってくるのが見えた。先客はおっさんとおばさん。2人とも次の明石港で降りて、大崎下島の大長港まで乗ったのは私だけだった(※後日調べ直すと、物産館がやはり待合室とのことであった)。

大長港は古びた建物と昭和を感じる待合室で、映画のロケに使えそうだ。

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