中国の宴会文化に、日本的な「二次会」はない 宴会を制する者、中国ビジネスを制す②  

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中国では、民営企業が国営企業である親会社の担当者を、日本からの客人と一緒に接待する場合がよくあるのである。その際、中国取引に慣れていない日本人はついつい、見た目で判断してしまう。見た目に貧相なことが少なくない親会社の担当者を、軽く見てしまう日本人が多いのだ。

もちろん、今では国営企業の方が給料も高く、恵まれていることも多い。だが、少し前までは国営企業の幹部でさえ一見さえない印象の人が多かったから、わかりにくかったのだ。国営企業が民営企業を実質支配している場合などは、宴会の座り方や挨拶の内容をよく聞いて判断しないと、失礼になる場合もあるから、注意しなければならない。

別のケースもある。契約交渉とはあまり関係がなくても、宴会の席に「年期のいった技術者」や古株の社員が参加するケースである。現場の技術者は声も大きくて、海外からの賓客との贅沢な宴会に参加するのは少ないので、ついつい多弁になって目立つの。こういう人たちにやはり日本人は思い違いをしてしまうことが少なくない。寡黙で静かな本当の権力者を軽くみると、後でバツが悪くてギクシャクすることもあるから、これもよくよく注意しなければならない。

宴会中に、ポロっと話す信用情報が大切

昼間の面談の時には、お互いにかしこまっているので形式的なやりとりに終わり、突っ込んだ議論は、お互いに多少の駆け引きもあるから、後に回すことが多い。しかし、限られた時間の中で結論を導き出すためには、できるだけいろいろな「周辺情報」や「裏情報」を入手する必要がある。

取引の規模が大きくなればなるほど、お互いの情報戦が重要になる。取引を有利に運ぶためには、相手の資金繰りや競合先との取引条件を知ってから、契約交渉に臨むのが鉄則である。そこで、その日の宴会から腹の探り合いが始まるのだが、さり気ない意見や噂話の中に、大事な情報が紛れ込んでいることも少なくないのだ。その意味でも宴会情報は裏情報の宝庫だ。

お酒が入ると、人は誰でも口が軽くなって、言わなくてもいいことまで話してしまうものだ。そんな時にポロッと出てくる話こそが役に立つのである(もちろんガセネタには注意)。相手には大いに酔ってもらい、自分は酔わずに、一言一句を注意深く聞き漏らさないようにしなければ「宴会名人」にはなれないのである。

中村 繁夫 アドバンストマテリアルジャパン社長

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なかむら しげお / Shigeo Nakamura

レアメタル(希少金属)の専門商社「アドバンスト・マテリアル・ジャパン代表取締役社長。中堅商社・蝶理(現東レグループ)でレアメタルの輸入買い付けを30年間担当。2004年に日本初のレアメタル専門商社を設立。著書に『レアメタルハンター・中村繁夫のあなたの仕事を成功に導く「山師の兵法AtoZ」』(ウェッジ)、『レアメタル・パニック』(光文社ペーパーバックス)、『レアメタル超入門』(幻冬舎新書)などがある。

 

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