まるで犯罪者扱い「成年後見人」で地獄見た家族 認知症の夫を支える妻のあまりに過酷な現実

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これを決めたのが、後見人に指名された地元の司法書士だった。この司法書士、認知症のことも介護のことも知らない。なにしろ、認知症になったらお金をくすねられてもわからないから、家族は必ず悪いことをすると思っているのだ。

生活費として決めた月15万円も、山崎家がどんな生活をしているか、聞いたわけではなかった。2人の娘がまだ学生だから、月15万円ではかなり厳しかったという。

「スーパーに行っても、買おうかやめようか、そればっかり心配していました。半額セールのシールなんか付いていたらすぐ買いました。なるべくお金をかけないように、自転車で農家を回って野菜を買いに行ったこともあります。なんでこんなことをしないといけないのか、悔しくて仕方がなかったです」

直子さんは、定期預金を解約させられて損しただけではない。認知症に無知な司法書士に、後見人ということで年間30万円の報酬を払うことになったのだ。それだけではない。裁判所がご主人の症状の鑑定を求めたら〈費用は5万円から10万円程度〉払わなければならなかった。

まるで犯罪者扱いの日々

認知症になった人の財産を守る法律が、逆に財産をかすめ取っているようなものである。認知症の人を抱えた家族は、これからどんなお金がかかるかわからず、不安を抱えているのに、なんだかんだと高額の報酬を請求されるのはどう考えてもおかしい。直子さんが「まるで詐欺に引っかかったみたい」というのは正直な感覚だろう。

では、またそれに見合った制度になっているのかというと、直子さんは「とんでもない!」と憤った。

「認知症になっても、外出したら楽しいから、ときどき主人を外食に連れて行ったり、家族で旅行したりします。外に出ると、ほんとに目がキラキラしてくるんです。だけど裁判所は、食事代は割り勘で、預金から払うのは本人分だけ、というんです。

主人がドアを壊した時もそうでした。『あなたたちも一緒に生活してるんだから、ご主人だけの修理費と違います』なんて。電気代はどうするんですかと訊いたら、『使った割合で割って』みたいなことを言うから、バカじゃないかと思いました。

これまで主人の給料で生活してきて、私や娘がお金を持っているはずがないのに、どうやって払うんですか。すると、私が後見人になったんだから、申請すれば3万円もらえますよって言うんです。裁判所がくれるわけでもなし、結局は主人のお金ですよ。本人は守られても、家族が守られない制度なんですね」

まるで犯罪者扱いだ。たとえ家族でも、被後見人の財産を盗むかもしれないと考えるのだろう。「財産がらみで事件が起こっているのかもしれませんが、一律に同じようにされたら困ります」と直子さんは言った。

普段の買い物はもちろん領収書をもらって管理してるが、10万円以上は、逐一、裁判所にお伺いを立てなければならないという。

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