孫正義が目指す「バフェット最強経営」の要諦 手堅く現金を生みながら投資できるモデル
ソフトバンクグループ、バークシャー・ハサウェイともに、その投資先は、大きくは事業投資と株式投資の2つに分かれます。事業投資は実際にその事業を行って成長させたり、他の事業とのシナジーを生み出したりなど事業上の目的があるのに対して、株式投資は株式の売却益や配当を得ることが目的です。
両社とも、連結決算においては、売上高計上されるのは事業投資先の連結対象企業の売上高だけで、株式投資の成果は各銘柄の評価損益などとして投資事業の営業利益ないし営業損失に計上されることになります。
ソフトバンクグループは通信のソフトバンクやスプリント、半導体のアーム、携帯端末流通のブライトスター、決済アプリ「ペイペイ」のPayPayなどへ事業投資を行う一方で、ソフトバンク・ビジョン・ファンドを通してWeWork、OYO、Slack、Uberなど82社(2019年5月現在)の株式を保有しています。
他方、バークシャー・ハサウェイは保険のGEICOやBerkshire Hathaway Primary Group、電力のPacifiCorp、エネルギーのBerkshire Hathaway Energy、鉄道のBurlington Northern Santa Feなど60を超える企業へ事業投資を行う一方で、株式投資先はアメリカン・エキスプレス、バンク・オブ・アメリカ、アップル、コカ・コーラ、デルタ航空といった主要15社をふくむ金融、テクノロジー、消費財、航空サービスなどの銘柄で、市場価格で1727億5700万ドル(2018年12月末時点、約18兆7000億円)の株式を保有しています。
バークシャー・ハサウェイの株式投資は、事業投資としての保険事業で得た保険料収入のうち保険料支払い準備金を差し引いた金額「フロート」が原資となります。保険事業の特性を生かした「Collect Now, Pay Later Model」を採っており、株式会社の形態をとった「投資ファンド」と呼ばれています。
投資手法を対比する、ユニコーン投資 VS. バリュー投資
ソフトバンクグループの投資手法には3つの特徴があります。
1つ目は、「群戦略」を採用していること。ソフトバンクグループを中心に結ばれた線の先に「No.1」がいくつもあります。この「No.1」がグループ会社であるヤフーやアリババ、アームなどです。
グループ会社それぞれから、また線が伸びており、いくつもの会社がつながっていく。これらソフトバンクグループと関係のあるグループ会社すべてがソフトバンク・ファミリーであり、どんどん増えて「群」を構成する、グループとして事業シナジーを発揮していく、というのが「群戦略」です。
2つ目の特徴は、AIに特化した投資。孫社長は、2019年に入ってから「AI群戦略」という言葉を使い始めました。AIが世界中のすべての産業構造を一変させてしまい、AIトラフィックとAI企業の時価総額が相関して急激に伸びていくであろうと予測しているからでしょう。AI群戦略という言葉を使うのは、ソフトバンク・ビジョン・ファンドが、AI関連企業を中心に投資を行っていくという意思表明でもあります。
3つ目の特徴は、ユニコーン企業を中心とした投資です。各事業領域の「No.1」ばかりをグループ入りさせるわけですから、その投資手法は成長率が市場平均よりも高く、大きな期待がもてる企業へ投資する「グロース投資」となります。ソフトバンク・ビジョン・ファンドの主要な投資先企業は「ある程度すでに成長して成功が見えてきているユニコーン企業」であることから、ソフトバンクグループは後発者利益を狙っているといえるでしょう。
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