原油相場は2020年に急落する可能性がある 短期的には1バレル=60ドル超えの可能性も

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今年の状況はどうかというと、10月29~30日に開かれたFOMCでは3会合連続で利下げが行われたうえ、短期債の購入という形でFRBのバランスシートを拡大させる方向に舵を切っており、市場に資金は潤沢にある。

一方では米中貿易戦争という爆弾を抱えており、世界的な景気減速に対する懸念も高まってはいるが、昨年のような弱気一色の状況に陥ることはないだろう。

9月にサウジの石油施設が攻撃を受けて以降、中東情勢に対する不安も高まっている。イランがウランの濃縮を進めるなか、近い将来に核合意から離脱するとの見方も浮上、サウジへの新たな攻撃がいつあっても不思議ではない状況下、積極的に売りを仕掛けにくいというのが実際のところだろう。

米中貿易交渉に対する先行き不透明感が高まれば、史上最高値の更新を続けてきたアメリカ株式は調整が進むかもしれないが、それにつれて原油相場も大きく値を崩すとは考えにくい。むしろ株式市場からの逃避資金が流入、原油相場を一段と押し上げる可能性のほうが高いのではないか。短期的にせよ、60ドルの節目を超えてさらに値を伸ばすことも考えられる。

年明け以降は状況が一変、大きく値を崩す可能性も

もっとも年明け以降は、状況が一変することになるだろう。感謝祭の直前にドナルド・トランプ大統領が香港人権・民主化法案に署名したことで、米中貿易交渉の行方は再び混沌としてきた。米中双方が政治的な判断で大きく譲歩するなら、第1段階の合意が成立することも考えられるが、可能性は大幅に後退したと見ていいだろう。

交渉が長期化するなかで、これまでにアメリカが賦課してきた関税が撤回されないなら、景気の減速を食い止めることは難しい。12月15日から予定されている追加関税が発動されるなら、減速のペースが改めて速まることも十分にありうる。

一方でアメリカのシェールオイルの生産は依然として活発、アメリカ内の石油生産は11月に入って過去最高を更新するようになってきている。アメリカをはじめとした非OPEC産油国の生産が増加する一方で、世界的な景気減速に伴って需要の低迷が続くなら、OPECが今の減産量を維持するだけでは世界市場の需給を均衡させることは難しい。

年明け以降は在庫もそれまでの反動から積み増しに転じる可能性が高く、市場心理が一気に弱気に傾いてしまう恐れは高いと見ておくべきだ。

株価の調整が大きく進み、投機資金が原油も含めたすべてのリスク資産から流出するような事態となれば、春に向けて40ドル台まで値を崩すことがあっても、何ら不思議ではないと見ておいたほうがいいのではないか。

松本 英毅 NY在住コモディティトレーダー

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まつもと えいき / Eiki Matsumoto

1963年生まれ。音楽家活動のあとアメリカでコモディティートレードの専門家として活動。2004年にコメンテーターとしての活動を開始。現在、「よそうかい.com」代表取締役としてプロ投資家を対象に情報発信中。NYを拠点にアメリカ市場を幅広くウォッチ、原油を中心としたコモディティー市場全般に対する造詣が深い。毎日NY市場が開く前に配信されるデイリーストラテジーレポートでは、推奨トレードのシミュレーションが好結果を残しており、2018年にはそれを基にした商品ファンドを立ち上げ、自らも運用に当たる。ツイッター (@yosoukai) のほか、YouTubeチャンネルでも毎日精力的に情報を配信している。

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