原油相場は2020年に急落する可能性がある 短期的には1バレル=60ドル超えの可能性も

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季節的な傾向から見れば、12月というのは基本的に原油価格が上昇しやすい時期と言える。北米が本格的な暖房需要期に入り、足元の需給が引き締まってくるところへ、アメリカの製油所の税金対策によって、原油在庫の取り崩しが進むことが大きな下支えとなるからだ。

アメリカの企業は通常利益のみならず、資産に対しても一定の割合で課税されることになる。(両方同時に課税されるのではなく、利益に対する税額と、資産に対する税額の、どちらか高いほうとなる場合がほとんど)製油所の資産には在庫として抱えている原油も含まれるので、年末の時点で在庫を過剰に抱えていれば、当然ながら資産価値も上昇、それに対する税額も高くなる。

そこで製油所は少しでも資産を減らすため、年末にかけては在庫の取り崩しをあの手この手で進めることになる訳だ。

具体的にはタンカーを沖合にわざと待機させ、輸入を年明け以降にずれ込ませる、あるいは製油所の稼働率を通常より高めにして、原油をより多く消費するといった方法が取られることになる。米エネルギー省エネルギー情報局(EIA)は毎週水曜日に在庫統計を発表するが、12月に入ると在庫の取り崩しが顕著となり、それを手がかりに買いが集まるといったパターンが、大きく見られることが多い。

昨年は行きすぎた金融引き締めで株価の急落につれ安

もっとも昨年は2018年12月6日に開かれたOPEC総会で、10月時点の水準から日量80万バレル生産を減少させることで合意したにもかかわらず、相場を押し上げることに失敗している。

その後、年末にかけて1バレル=50ドル台前半から40ドル台前半まで10ドル近く値を下げた。在庫の取り崩しも例年どおり進んだのだが、一方では2018年12月19日に開かれた米連邦公開市場委員会(FOMC)でその年4度目の利上げに踏みきったことが嫌気され、株価が大きく値を崩すなかで投機的な売りが加速した。

行きすぎた金融の引き締めによって景気の減速が進み、それにつれて需要も伸び悩むという需要面の弱気材料が、OPECの減産や在庫の取り崩しといった供給面の材料よりも大きく影響したという訳だ。

相場は2019年に入ってすぐ、株式市場ともども強気に転じることになったのだが、きっかけとなったのは言うもでもなく、FRBのジェローム・パウエル議長が利上げの打ち止めを示唆する発言を行ったことだ。FRBの金融政策は、それだけ市場に与える影響が大きいということなのだろう。

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