実は鉄道旅に使える、飛行機の「お得なプラン」 単純往復や出張旅行だけじゃもったいない

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乗客がまばらな古いディーゼル列車の中から、池田駅の名物駅弁「ステーキ弁当」(要電話予約)を食べながら冬の太平洋を眺め、ときおり居眠りした。

この日の宿は根室としたが、釧路にすべきか迷いそうだったので、パックからは外しておいた。どこに泊まるか迷いそうな場合はパックから宿泊を外しておくと、より自由な旅が楽しめる。

翌朝は、幻妖な湿原の中を列車が突っ切っていくという日本離れした景色を眺め、牡蠣で有名な厚岸で下車した。寒空のもと15分ほど歩いてたどり着いたのは漁協の直売店。販売している牡蠣をその場で食べられるのだ。

5日目は道北の豊富温泉に向かった。油分を含んだ泉質とのことで、一度訪れたいと思っていたのだ。温泉までのバスが出る幌延駅には昼前に到着した。

雪降る夜の豊富駅(筆者撮影)

旅の楽しみとして、町の食堂に入るというのがある。雪道を5分ほど歩き、店を見つけた。一番乗りで、とりあえず無難なメニューを頼んだ。すると続々と作業服の男たちが入ってきて、慣れた口調で次々にカツ入りカレーラーメンを注文している。人気メニューはこれだったか。いずれにせよ、地元で仕事をしている人々でにぎわう店に外れはない。

豊富温泉は、浴室に入るとびっくりするほど石油臭かった。けれどもすぐ慣れるし、なにしろ皮膚によいとのことで、長期の湯治客でにぎわっているのが印象的であった。外には雪が舞っており、より温泉のよさが際立った。

思いもよらないコースが見つかるかも

最終日は稚内から普通列車で南下した。巻き上げる雪が視界をさえぎり、天塩川には雪をまとった氷があちこちに浮いている。

和寒という、道内でも有数の寒冷地で下車した。深い雪の中を歩き、やがて道の外れに食堂を見つけた。雪を落とし、引き戸を開けると先客のおっさん2人が煙草をふかしながら農家の補助金について熱心に会話している。

道内有数の寒冷地として知られる和寒(筆者撮影)

カツカレーを注文し、黙々と食べ終わってハンカチで額を拭いていると、「ストーブ消そうか? お客さんの真後ろだものね」と話しかけられ、それをきっかけにいくつかの会話をした。地元の人しか来ない店にとって私は闖入者なのであり、声をかけるタイミングもなかったのだと思う。この食堂に限らず、一見無愛想に感じても、会話が始まるとそうではないことが多い。

単純往復の手段と思われがちなダイナミックパッケージだが、このように自由な旅を支える手段としても便利だ。短い旅から長い旅まで、さまざまな組み合わせが考えられる。思いもよらないコースを見つけることができるかもしれない。

八田 裕之 週末旅行家

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はった ひろゆき / Hiroyuki Hatta

1967年生まれ。武蔵工業大学(現:東京都市大学)工学部電子通信工学科卒。JR全線完乗した鉄道ファンにして、Jリーグをこよなく愛する。平日は会社員だが休日はJリーグ遠征で全国奔走の日々。フュージョンバンド「Quiet Village」のリーダーとしてギターと作曲を担当、オリジナルアルバム発表、鉄道コンピレーションアルバム参加など、音楽活動も行う。

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