ついに都心直通「相鉄」はメジャーになれるか ブルーの電車で都心での認知度アップ狙う

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利便性向上で路線の魅力を高め「選ばれる沿線」に――。相鉄の都心直通プロジェクトは、1990年代半ばから続いた利用者減少への危機感が背景にあった。

相鉄線方面と東京都心を結ぶ路線の構想は1960年代からあったが、今回開業した相鉄・JR直通線など「神奈川東部方面線」の計画は2000年代に入ってから進展(2015年9月21日付記事「悲願の相鉄『都心乗り入れ』はいつ実現するか」)。2005年、既存の路線や施設などを有効活用して利便性の向上を図る「都市鉄道等利便増進法」が制定され、相鉄・JR直通線はその認定第1号となった。

当初は2015年4月の開業を目指していたが、のちに2018年度内に、さらにその後2019年度下期に変更。整備費用も当初よりふくらむなど、開業までには紆余曲折もあった。

開業日を11月30日と発表したのは今年の3月28日。発表のセレモニーで、相鉄の滝澤秀之社長(現・相鉄ホールディングス社長)は、開業がこの日に決まった理由について「2019年度下期ということだったが、JR中心に関係者をまとめていただき、期間短縮できた。2度ほど開業時期がずれた歴史を持っているので、1日でも早く開業したいと思っていた」と述べた。

相鉄の「新世紀」スタート

相鉄は2013年、都心直通を見据えて認知度やイメージの向上を図るべく「デザインブランドアッププロジェクト」をスタート。車両や駅などを統一したコンセプトのデザインでリニューアルし、イメージの刷新を図ってきた(2015年12月17日付記事「相鉄、ネイビーブルーで挑むメジャーへの道」)。

その象徴が、横浜の海をイメージしたという「ヨコハマネイビーブルー」の電車だ。車両のカラーリング変更を発表した2015年当時、相鉄の担当者は「都心に乗り入れていくということで一番注目されるのは車両。上質感があり、ブランド力の高い車両は走る広告塔になる」「沿線に住むというプライドをくすぐられるような電車にしたい」とその狙いを語った。直通線の開業で、いよいよその真価が問われることになる。

相鉄の都心直通プロジェクトは、今回のJR直通にとどまらない。2022年度下期には、羽沢横浜国大駅から新横浜駅を経て東急線の日吉駅までを結び、東急線と相互直通運転する「相鉄・東急直通線」も開業予定だ。最大で1時間当たり4本の相鉄・JR直通線に対し、東急直通線はラッシュ時に1時間当たり10~14本程度を運行する計画で、都心直通の「本命」は東急直通線との見方もある。

2017年に創業100周年を迎えた相鉄。デザインブランドアッププロジェクトのコンセプトは「これまでの100年を礎に、これからの100年を創る」だという。神奈川県内から飛び出し、ついに都心へ。相鉄にとっての「新時代」が始まった。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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