トランプ大統領の弾劾、公聴会の次はどうなる

ニクソン時代とは異なる「社会の2極化」の壁

さらには、上院の弾劾裁判を主宰するのはジョン・ロバーツ連邦最高裁長官だ。ロバーツ長官がこれら大統領側近も証言すべきと判断した場合、上院の弾劾裁判でボルトンやマルバニー、ポンペオなどの証言が実現する可能性もある。ただし、ミッチ・マコネル上院院内総務が率いる上院共和党が単純過半数の51票でロバーツ長官の判断を覆さないことが前提だ。ロバーツ長官は共和党のジョージ・W・ブッシュ大統領に指名された人物で、司法の独立性を重視し保守系でも比較的に穏健な思想を持つと見られている。

昨年、サンフランシスコ連邦地裁のジョン・タイガー判事がトランプ政権の難民申請規制を差し止めた際に、トランプ大統領は彼を「オバマの判事」と呼んだが、ロバーツ長官は「われわれに、オバマの判事、トランプの判事、ブッシュの判事、クリントンの判事もいない」と司法の独立性を主張する異例のコメントを発表している。政治的判断の避けられない上院の弾劾裁判で、裁判の規則を定めるマコネル上院院内総務、そしてロバーツ長官がどこまで真相追及するかに注目だ。

大統領側近がウクライナ疑惑をめぐる大統領の直接の関与について証言したとしても、上院共和党議員の心を動かすこととなるかどうかは定かではない。下院情報特別委員会の公聴会の結果からも、共和党支持者は大統領の弾劾・罷免を拒否することで、心が固まっている可能性もある。

ウクライナ疑惑をめぐるトランプ大統領の行為については、7月25日に行われたトランプ大統領とゼレンスキー大統領の電話会談の通話記録などですでに多くの衝撃的な新事実が発覚している。ニクソン大統領の弾劾の場合には、上院ウォーターゲート特別委員会ではホワイトハウスに録音装置が存在していたことが初めて確認され、これが衝撃となって、その後の大統領辞任の契機となった。

トランプ大統領の弾劾でも、仮に7月25日の大統領の関与を示す通話記録が公聴会を通じて初めて公開され、国民の間で衝撃が走っていたとしたら、国民の大統領弾劾・罷免に対する考えは大きく変わっていたとも指摘される。つまり、まだ全貌が分からない時点で7月25日の通話記録が公開されたため、共和党と民主党でそれぞれ異なる解釈がなされ、当時は大統領の行為の重大性が幅広く国民に認知されなかったというのである。初期段階で通話記録を公開したトランプ大統領の判断が政治的に奏功した。

カギは共和党議員の地元有権者がどう判断するか

共和党内ではハード下院議員のように、大統領の行為は不適切であるものの、弾劾・罷免には値しないとの判断に固執する可能性も大いにある。共和党が大統領の無実を訴える理由の1つは、トランプ政権が最終的にはウクライナに対し首脳会談も軍事支援も実行したことだ。

だが、内部告発者によってウクライナ疑惑が明るみに出たことで、それまで差し止めていた軍事支援を施行するに至ったとも言われている。ニューヨークタイムズ紙(11月27日付)によると、同軍事支援が9月初めに施行される直前の8月末、大統領は内部告発者について報告を受けていたという。つまり、泥棒が強盗に入った現場で警察に見つかり、強盗未遂の容疑で捕まったのと同じだと民主党は主張する。いずれにせよ、大統領の進退は最終的には法律ではなく政治で判断が下される。したがって引き続き上院共和党議員の地元有権者の声が重要だ。

2020年はトランプ大統領の弾劾裁判とともに幕を開ける見通しだ。来年は国民の関心が大統領選にシフトすることが不可避である。こうした状況下、大統領のウクライナ疑惑について、共和党有権者が罷免するに値するとの判断を促すような驚愕証言が上院弾劾裁判で飛び出すか、注目される。

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