トランプ大統領の弾劾、公聴会の次はどうなる ニクソン時代とは異なる「社会の2極化」の壁

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議会ではウィル・ハード下院議員(共和党、テキサス州選出)の言動に注目が集まっている。今期で退任を発表しているハード下院議員は自らの再選を考慮しなくてもよいため、下院情報特別委員会のメンバーである共和党議員の中では最も中立的な立場を取るであろうと見られてきた。だが、公聴会最終日、同氏は大統領の行為を批判したものの、弾劾までには値しないと評価した。共和党の中で最も弾劾支持に回りやすいと考えられていた同氏の言動からも、引き続き下院本会議での弾劾に関する採決では共和党は皆、反対して、党派によって投票はほぼ分かれるとみられる。

議会の感謝祭休会明けの12月第1週初めに、下院情報特別委員会は下院司法委員会に対し、報告書(通称:シフ報告書)を提出する。その後、12月4日から下院司法委員会が証言者を迎え公聴会を実施したうえで、弾劾条項を作成する。議会関係者によると、情報特別委員会は事実をまとめ、司法委員会はその事実を法律に照らし合わせて弾劾条項を作成するといった役割分担である。

12月第2週あたりに司法委員会で弾劾条項を可決した後、第3週あたりに民主党指導部が下院本会議で弾劾成立を目指す見通しだ。第3週には予算協議の期限も迎え、議会は多忙を極める。いずれにしても、2020年は年明けとともに上院で弾劾裁判が開始される模様だ。

上院3分の2の高い壁を打ち砕く証言が登場するか

上院が弾劾裁判で大統領を有罪とし解任するには47人の民主党議員に加え、少なくとも20人の共和党議員が造反する必要がある。そのため、上院で大統領が罷免される可能性は極めて低い。

だが、事態が急変する可能性は残されている。仮にバイデン親子の調査を条件に軍事支援を止めるように大統領より指示されたとの、大統領側近の証言を聴取できれば、共和党は考えを変える可能性があり、大統領罷免においてゲームチェンジャーとなりうる。そうした事態が上院での弾劾裁判で見られるかもしれないと、民主党はひそかに期待をかけている。

これまでトランプ政権は下院情報特別委員会の要請に応じず、情報提供や証言者をブロックしてきた。一部の政権幹部は政権の意に反して同委員会で証言した。だが、ミック・マルバニー大統領首席補佐官代行、ジョン・ボルトン前大統領補佐官(国家安全保障問題担当)、マイク・ポンペオ国務長官などトランプ大統領の側近中の側近などが公聴会で証言していない。

こう着状態を打開するきっかけを作るのは、3権分立のもう1つの機関「司法」かもしれない。今後、ボルトン氏らが議会で証言するべきか、司法は判断を下す見通しだ。仮にボルトン氏らがその決定に抵抗して上訴した場合は、上院の弾劾裁判に間に合わない可能性が高い。だが、上訴せず証言に合意することも想定される。

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