「日本式」ジャカルタ地下鉄、開業半年の通信簿

定時運行率ほぼ100%、停電時も迅速対応

総延長16kmほどの鉄道で小回りが利くとはいえ、日本では停電などの際、軒並み数時間にわたり乗客が車内に缶詰めになることを考えると、宇都宮氏もその対応の素早さには驚きを隠せない様子であった。発生後すぐに各列車の詳細な位置情報や避難誘導状況を公式SNSにアップするなど、MRTJ独自の創意工夫もあった。

MRTJの車両基地で訓練に立ち会う日本のプロジェクトメンバー(左)(写真:MRTJ)

とはいえ、初動対応が早ければそれでいいというものでもない。MRTJの職員たちは日本の成熟した異常時対応のノウハウをまだ完全にはわかっていない部分もあるという。あくまでも謙遜して話す宇都宮氏であるが、停電直後の対応からその後の復旧、運転再開に至るまで、それを支える日本の鉄道マンの奮闘があった。ただ、単なる日本式の押し付けにはならないように注意しているそうだ。

一見順調な運行を続けているMRTJだが、当然ながら細かな面では改善すべき点も見つかる。OMCJは開業後もMRTJと定期的にミーティングの場を設けているが、運行の面においては、あたかも「MRTJの悩み相談」のようになっているという。鉄道は経験工学であり、日本の鉄道も多くの失敗を積み重ねて現在に至っている。長い歴史の中で培った日本の鉄道の教訓を共有している形だ。

日本とインドネシアをつなぐ役割

OMCJにおける日本コンサルタンツの役割は、現地でのアドバイザーというだけでなく、日本の鉄道会社とMRTJを結ぶ調整役としての立場もある。

開業前には、日本から現業の実務経験者を十数名規模でインドネシアに送り込み、現場指導を行った。また、MRTJの若手社員を日本の鉄道現場に派遣し、品質維持や安全管理の意識付けを目指す教育も実施している。

ただ、日本の鉄道事業者が外部からの研修を一斉に受け入れられる十分な人材や時間、場所が確保できないという事情もあるという。そこで、土木、軌道、信号通信といったように社員を各部門に分けて、それぞれ異なる鉄道会社に受け入れてもらっているそうだ。

こういった点は、国内の主要鉄道会社10社の出資で設立され、大半が各社から出向の現役鉄道マンで構成される日本コンサルタンツの「日本で唯一の海外鉄道専門コンサルタント」としての真価であると言っても過言ではない。

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