中学生男子が、いきなり「男」の顔になった瞬間
以前、ある国際ロボットコンテストの手伝いをしたときのこと。会場設営の現場には、地元中学生の男子・女子が数名、ボランティアで集まっていました。
中学生といえば、男女の成熟度合いに最も差が出る時期。周囲に気を配りながら粛々と作業をこなせる女子と、終始落ち着きがなく、ちょっとしたヒマができると、すぐにホウキと新聞紙で野球を始めたがる男子。戦力としての差は歴然でした。
会場にいても邪魔になるだけのある男子に、「近くのコンビニで、来場者が脱いだ靴を入れるためのビニール袋を買ってきてくれ」と頼みました。それほど難しいことではありません。
ところが「はぁ……」と不承不承に引き受けた彼は、数分後、手ぶらで戻ってきてひと言、「なかったです」と。そのヌケヌケとした「使えなさ」に、開いた口がふさがりませんでした。
「あのさ~」と言いたくなる気持ちをぐっとこらえ、女子に同じことを頼んだところ、「近くのコンビニにはなかったけど、もう1軒先のコンビニにありました。これでいいですか?」と、実にそつがなく、その仕事ぶりには感動すら覚えました。
融通が利かず、気も利かない幼稚な男子たち。どうにかして、彼らを戦力として使えないかと悩んだ私は、「そうだ!」とひらめきました。「男には任務と権力だ!」と。
そこで、その男子に「君はこれから訪れるお客さんにビニール袋を渡す係だ。その隊長に任命する。周りの男子を率いて、くれぐれも漏れなく、粗相のないように配ってくれ」と、頼みました。
そのときの彼の表情は、いまだに忘れられません。それまで1ミリも頼りがいを感じさせなかった彼が、「そうか、オレが隊長か」とでもいうように、みるみる「働く男の顔」として引き締まっていきます。その後、周りの男子たちにキビキビと指令を出して(ときには「おい、ちゃんとやれよ」としかりながら)、働き出したのです。さきほどとは別の意味で、感動的な光景でした。
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