美容整形とセックス、過激な描写が物議を醸す

人はなぜ「美」にこれほどまで執着するのか?

生々しい手術シーンと過激なセックス描写に批判も

  『NIP/TUCK』予告編(英語版)

 

本作は2003年から2010年まで放送され、全6シーズンで完結した。開始当初は、題材もさることながら、実に生々しい手術シーンや過激なセックス描写が批判を受け、スポンサーを降りる企業が出るなど物議を醸した。

確かに、血みどろの手術シーンは本作のお約束で、思わず目を背けたくなることもあるが、これが美容整形のリアルでもあるのだろう。こうした過激さの一方で、本作が批評家に高く評価され数々の賞に輝いたのは、美を追求する人々の心の奥にある闇や、アメリカ社会の容姿重視の風潮に対するアンチテーゼ、外見に対する偏見や差別を扱うなど、社会派としてのメッセージがきっちり盛り込まれているからだ。

ともすればキワモノになりかねない題材を、見応えのあるドラマに昇華させたのは、プロデューサーのライアン・マーフィー。日本では人気の青春ミュージックドラマ『glee/グリー』の生みの親としても知られるが、その前に手掛けたのが『NIP/TUCK』である。

現在は、これまた大ヒットを飛ばしているドラマ『アメリカン・ホラー・ストーリー』でも気を吐いており、マーフィーは今をときめく米国エンタメ界の才能として注目を集めている。ただし、その作風はジャンルを問わず、いずれも強烈な毒気が持ち味なので取り扱いには要注意。

毎日がつまらない! 刺激が足りない! あるいは、「なんだかんだいって美男美女って得だよね?」と人生に不満を抱いている人に、強く『NIP/TUCK』をお薦めする。美を追求することは自然な欲求かもしれないが、人間の欲望とはいかに果てしなく、グロテスクであることか。筆者はこの問題を考えるとき、いつもオスカー女優であるキャサリン・ゼタ=ジョーンズが、その昔、ある雑誌のインタビュー記事の中で「ハリウッドで自分の容姿に満足している女優なんていない」と語っていたことを思い出すのだった。

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