「無礼な人」が近くにいると息苦しいのはなぜか 無礼さの「害悪」は脳に焼き付いて離れない

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

無礼な言動に触れて感情が強く動かされると、そのことは決して忘れられない。無礼な態度を取っていた人の姿を見るだけで、また無礼な態度に触れた場所に行くだけで、そのときの感情がよみがえってしまう。

脳の中で感情に大きく関わるのが「扁桃体」というアーモンド形の小さな部位であることはかなり以前からよく知られている。

例えば、いつも上司のオフィスのすぐそばで仕事をしている会社員がいたとする。上司のオフィスからは、誰かに無礼な態度で接している声が頻繁に聞こえてくる。扁桃体がはたらくのはそういうときだ。

その声を聞いたとき、扁桃体はよくない感情を生み出し、それは脳内に広まってしまう。しばらくすると、上司のオフィスのドアを見るだけで、負の感情が起きるようになるだろう。

 無礼な態度に触れてしまうと、その後は、少しのきっかけでそのときの感情がよみがえってしまうのだ。無礼な態度を取った本人が隔離されたあとも、それは続く。隔離しても問題がすべて解決するわけではない。人間の心はささいな出来事で傷ついてしまう。

例えば、誰かに悪口を言われる、大勢の前で自分の能力を否定される、といったことがあると、言った本人に悪気はなくても、傷跡は残るし、仕事にも悪影響がある。幸福感も低下してしまう。

嫌いな人に囲まれて過ごすとどうなるのか

イェール大学の心理学者、アダム・ベアとデイヴィッド・ランドが開発した数学的モデルによれば、嫌な人たちに囲まれて日々を過ごしている人は、無意識のうちに利己的になり、思慮を欠いた行動を取るようになるという。

深くものを考えないため、互いに協力し合ったほうが利益になるのが明らかな場合ですら、利己的な行動を取るようになるのだ。環境は必ず人に影響を与える。

よくない環境にいれば、自分の言動もよくないものになるし、それがまた周囲の人に悪い影響を与えてしまう。

無礼な言動の悪影響は短時間のうちに広がるし、影響はその言動のあとも長く残ることになる。しかし、礼儀正しい言動にも同じことが言える。

あるバイオテクノロジー企業を対象に私が同僚とともに実施した調査によれば、一部の社員がほんの少し礼儀正しい行動を取るだけで(例えば、思いやりのある言葉をかける、微笑みかける、話をしているときに途中で遮らない、など)、相手の社員もすぐに同様のことをするようになるとわかった。

そして短時間のうちに全体に礼儀正しい行動が広まる。だが、これはわざわざ調査をして厳密に証明する必要もないことだろう。日常生活の中で私たちの誰もが感じていることだ。

次ページ無礼さだけでなく礼節の伝染力も強い
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事