「教育という名の虐待」が蝕む愛着障害という病 数学の得意・不得意にも愛着が関与している

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親が子どもに勉強を教えるときには、この事実を肝に銘じるべきだろう。問題を間違えたからといって、叱ったり、けなしたりした場合、愛着が受けるダメージによるマイナスは、教えることで得られる学力のプラスを帳消しにしかねないのだ。

叱ったばかりに子どもとの関係が悪化し、しかも自信をなくさせるくらいなら、何も教えないほうがずっと子どものためになる。

医学部入学が至上命題の家庭で

だが、わが子のこととなると、誰もが必死になり、目の色が変わってしまうものだ。学力や学歴を偏重する風潮は、少子化や終身雇用制の崩壊ということもあり、一時に比べると多少和らいだ感があるとはいえ、一部では、ますます激しさを増している。

ことに医学部受験を目指す家庭では、行きすぎたことも起きやすい。開業医の子弟では、医師になることが既定路線とされ、小学生になるかならないうちから、医学部に進むことが至上命題で、勉強漬けの日々を過ごさせられることも珍しくない。

F美さんも、開業医の家に生まれた。両親とも医師で、夜間まで忙しく働いていたので、夕食は、家政婦さんか家庭教師の先生と一緒に食べるのが普通だった。たまに一緒になっても、交わす会話といえば、勉強のことか、将来進む学校の話だけ。小学生の頃から、毎日何時間も勉強を強いられ、少しでも成績が下がると、人間としての価値がないといわんばかりに罵られた。

そんな境遇の中、F美さんは両親の期待に応えようと頑張った。試験の前になると、腹痛や下痢といった症状がみられるようになったが、親が医者なので、薬を渡されて終わりだった。髪の毛がごっそり抜けたこともあるが、また生えてくると、見て見ぬ振りをされた。

高校に進学するときまでは、どうにか踏ん張ったが、そろそろ限界が来ていた。高校ではいくら勉強しても、成績は伸び悩み、試験のたびに親は怒ったり嘆いたりした。両親がお互いをなじり合い、夫婦ゲンカを始めることも始終だった。その頃から、リストカットが始まった。やがて、過食嘔吐が加わった。

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