さらなる日経平均上昇を暗示する2つの指標 「企業業績はメタメタでも、株価は好調」の謎

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ちなみに、工作機械受注額が現在の水準から横ばいで推移するとの仮定を置き、前年比の数値を作成すると、2020年2月には前年比減少率が1桁まで縮小する。

これは比較対象となる前年の水準によって前年比の数値が影響を受ける「ベースエフェクト」、「前年の裏」という現象で、データ分析の際に注意を要するポイントだ。過去数カ月、工作機械受注はベースエフェクトによって前年比減少率が誇張された側面がある一方、先行きは比較対象となる前年の数値が弱めになることから、前年比の数値は強めの数値が出やすくなる。

したがって、足元の実勢がさほど変化がなくとも、前年比でみた数値が押し上げられ、そのこと自体が景気認識に影響を与える可能性がある。なお、前年比の数値を(過度に?)重視する企業決算では、とくにその傾向が強いため「増益率」などをみる際には注意しておきたい。

工作機械の受注については、①完成品メーカーの需要予測が工作機械受注額に反映されること、および②工作機械受注の前年比変化率が底打ちしつつあることを確認した。

ここからは、より広範な視点で世界の設備投資需要を読む観点からOECD景気先行指数」を用いて世界経済の先行きを予測してみたい。

世界景気を占ううえで重要なこの指標は、直近19カ月連続で低下し、目下の水準は2009年9月以来の低水準を記録している。2009年といえば、リーマンショック発生の翌年であるから、いかに世界経済の風向きが悪いかを物語っている。

数カ月後に、景気は改善に向かう?

ただし、こちらも工作機械受注統計と同様、「カーブの下向き度合い」が“わずか”ながら緩やかになりつつある。

OECD景気先行指数は、いくつかの経済指標を組み合わせた複合指標であるから、その改善は広範な経済指標が改善に向かうことを意味する。その頃には金融市場で共有される景況感が随分と改善している可能性がある。

日経平均株価は、直近ボトムを付けた8月26日終値(2万0261円)から11月5日終値時点で2990円上昇した。昨年来高値までにまだそれなりの距離があるとはいえ、世界の景況感が今後改善するなかで、製造業を中心に生産・輸出が上向けば、引き続き高値更新となりそうだ。

藤代 宏一 第一生命経済研究所 主席エコノミスト

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ふじしろ こういち / Koichi Fujishiro

2005年第一生命保険入社。2010年内閣府経済財政分析担当へ出向し、2年間『経済財政白書』の執筆や、月例経済報告の作成を担当。その後、第一生命保険より転籍。2018年参議院予算委員会調査室客員調査員を兼務。2015年4月主任エコノミスト、2023年4月から現職。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。担当は金融市場全般。

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