ラグビーW杯「ビール決戦」、勝者は誰なのか 9月のビール消費量は軒並み前年超えを達成

拡大
縮小

ところが、大会期間中は誤算が続いた。まず、想定したほどに訪日客の利用が伸びなかった。2週間にわたって開催されるオリンピックと比べ、ラグビーW杯の大会期間は2カ月強と長く、「試合がない日でも足を運んでくれる」(ハブの広報IR担当者)と見込んだが、「地方などに観光している人が多かった。そこを想定していなかった」(同)。

それでも、大会開始後の9月20日~30日は、HUBの全店売上高が前年同期比152%を記録。9月全体でも同約3割の増加と高い伸びを見せた。しかし、これは11日間のうちの10日間、ラグビーの試合が行われたことを考慮しなければならない。

10月は試合のない日の客足減少が顕著に

10月に入ると、快進撃を続けた日本チームにより注目が高まり、日本戦の行われた5日(対サモア)、13日(対スコットランド)には計画平均値の倍近く、過去トップクラスの売り上げを記録した。その一方で、試合の間隔が空き始めたことにより、試合のない日の客足の減少が顕著になった。

(出所)ハブのIR資料

さらに10月に入ると、稼ぎ時の週末に台風が直撃。台風19号の影響を受けた10月12日にはイングランド対フランス戦、ニュージーランド対イタリア戦の2試合が中止になり、90店舗以上が休業に追いこまれた。10月の全店売上高は前年同月比145%を計画していたが、「これには届かなさそうだ」と同社の広報IR担当者は肩を落とす。

ただ、ハブの業績自体は好調に推移している。会社設立以来20期連続の増収、4期連続の増益を続けており、今2020年2月期も戦略的にドリンクの販売単価を下げて客数を増やすことで、売上高129億円(前期比11.5%増)、純利益6.2億円(同16.7%増)と過去最高益の更新を見込む。今後はスポーツイベントで来店した新規客がリピーターとなり、安定した客数を保てるかどうかが課題となる。

2020年の東京オリンピックには7人制ラグビーが種目に含まれ、ビールメーカー唯一のスポンサーはアサヒとなる。急激に人気の高まったラグビー同様、キリンもハブも、その後のファン定着への努力が必要になる。

兵頭 輝夏 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ひょうどう きか / Kika Hyodo

愛媛県出身。東京外国語大学で中東地域を専攻。2019年東洋経済新報社入社、飲料・食品業界を取材し「ストロング系チューハイの是非」「ビジネスと人権」などの特集を担当。現在は製薬、医療業界を取材中。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【逆転合格の作法】「日本一生徒の多い社会科講師」が語る、東大受験突破の根底条件
【逆転合格の作法】「日本一生徒の多い社会科講師」が語る、東大受験突破の根底条件
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT