「中古トラクター」がネットでバカ売れする理由 農機具は「ネットで買って売る」時代が到来

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今後も輸送業者や販売店、修理店などと提携を進め、サービスをより早く、低コストで提供できることを目指す。10月には、マザーズ上場で野菜・果物の直売所事業を手掛ける農業総合研究所と業務提携し、同社の登録生産者8500人向けに農機具の買い取りサービスを始めた。

「早く対応し、高く買い取り、かつ安心ということが重要だと思っている。自信を持ってサービスを提案していきたい」(伊藤氏)。

「使いかけの口紅」「飲みかけの酒」に需要も

では、マーケットエンタープライズが次に狙うのはどんな分野なのだろうか。

同社のプロダクト・カスタマーサポートセンター統括で、「リユース・エバンジェリスト」の肩書を持つ高野浩志氏は、これまでのニッチ戦略についてこう語る。

「リユース・エバンジェリスト」の肩書を持つ高野氏は、入社前に家電量販店でホビー製品のバイヤーを務めていた(記者撮影)

「大きなもの、大量にあるものなど、売却が難しかったり、コストがかかったりしてしまうものなどを、少しでも手軽に扱えるようにと、サービスを拡大してきた。新品だけでなく、古くてもいいものには価値があり、欲しい人が必ずいる。ネットならそこにリーチすることができる」

高野氏はリユース品の概念が今後変わっていく可能性を指摘する。

「ドローンやロボットなど、スマート家電はさらに進化し、リユース品も増えていくだろう。リユースに回ってくるものはユーザーが一度購入し、イエスを出したもの。だからその次でも買いたい人がいる。また、リユース品に対するハードルは想像以上に下がっている。今まで商品として有効だと思われていなかったものにチャンスがあるかもしれない。たとえば飲みかけのお酒や少し使った口紅などの化粧品。社会人は買えても、女子高生は高くて新品を買えなかったりするからだ」

消費者のリユース品に対する精神的なハードルが下がったことで、今後はリユース品のジャンルも一段と広がりそうだ。

マーケットエンタープライズの業績は、2020年6月期に売上高が100億円の大台に乗り、営業利益も6億円(前期4.5億円)と増収増益を見込んでいる。ユーザーと商品の裾野が同時に広がっていく中、競合他社とは異なるニッチの金脈を掘り当てられるかが、さらなる成長のカギになる。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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