「中古トラクター」がネットでバカ売れする理由 農機具は「ネットで買って売る」時代が到来

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農機具買い取りサービスには、新規就農のハードルを下げるという狙いもあった。農水省の調査によると、49歳以下の比較的若い世代の新規就農は、ここ数年2万人前後で推移している。こうした新規就農者がまず直面するのが農業の初期投資額の大きさだ。農機具を新品で買いそろえると、数百万円から1000万円を超えることもある。

こうした問題もあって新規就農者の定着率は低く、新規就農者の3割は生活が安定しないことから5年以内に離農している(2014年度の『食料・農業・農村白書』)。そこで伊藤氏は、「中古品を活用できれば就農のハードルが下がり、農業の活性化につながるのではないか」と考えた。

説明書を読みあさり、査定マニュアルを作成

伊藤氏の実家は福島県でコメや野菜を栽培する農家のため、農機具には慣れたもの。ただ、買い取りとなると話は別だ。何をどうチェックすれば査定できるのか。どうすれば買い取りのスキームを組み立てられるのか。まずは知識を詰め込む猛勉強から始めたという。

農機具を査定する伊藤氏。伊藤氏は同社の建機買い取り担当者でもある(写真:マーケットエンタープライズ)

メーカーのサイトで説明書を読みあさり、あらゆる種類の機械や部品の名前を覚えていく。実際に機械を動かす講習にも参加した。農家の実家にも相談。農機具の買い取りを行う会社やオークション会社に出向き、何をチェックし、どんな状態ならいくらで売れるのかを学び、査定マニュアルを作っていった。

同時に車の輸送業者や地域の農機具販売店との連携も進め、関西圏で法人向けの仮サービス開始にこぎ着けた。この間わずか2カ月。外部の専門家を招聘せず、自社の人材だけで立ち上げた。実にベンチャー企業らしいスピードと馬力だ。

その後、2017年2月に正式にサービスを開始。農機具を事前査定できる担当者を置き、毎日やってくる依頼に対応している。全国各地のリユースセンターにも査定の知識を身に付けた人材が配置され、沖縄県を含め、全国で買い取りを行っている。前述のように、ヤフオクなどで個人向けに出品もしている。

農機具の貢献もあり、マーケットエンタープライズの1品当たりの平均販売単価は2018年6月期の約2万9500円から、2019年6月期は約3万1500円に上昇した。

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