天皇陛下の旧友が明かす「若き日の陛下」の素顔 晴れ男は昔から、気さくで親しみやすいお人柄

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ご即位された5月1日も雨が心配されたのに、「即位後朝見の儀」が始まる前には空に晴れ間が見えていました。だから10月22日も、少なくとも「即位の礼」の前、雨はあがるだろうと思っていたのです。

ところが当日、東京都内は前夜からの雨。パレードが11月10日に延期されたので、雨でもそれほど影響はないとテレビを観ていたら、皇居がある千代田区は「即位礼正殿の儀」が始まる直前に雨があがり、青空が見えました。自分で予想していながらびっくりです。しかも皇居のあたりには、空に大きく弧を描いた七色のみごとな虹。「高校時代から存じ上げていた陛下が、日本の天皇になられたのだなぁ」としみじみ思いました。

心配だったトランプ大統領との会見

心配といえば、天皇皇后両陛下が5月に来日したトランプ大統領夫妻とお会いになられた日はちょっと落ち着きませんでした。即位後初めて外国の元首にお会いになり、両陛下の“外交デビュー”といわれた会見です。

両陛下が宮殿の玄関でトランプ夫妻を出迎えたとき、通訳がいないことに大統領が驚いたと話題になりました。正式な懇談の場を除くと、通訳なしでずっと英語で会話されていたそうです。

筆者が輸入していた「においの残らないニンニク」の瓶を手にする陛下(写真:筆者提供)

私が心配したのはそのことです。陛下と私が頻繁にお会いしていた頃は、ずっと英語でおしゃべりしていたので、陛下の英語力に不安を感じたのではありません。もちろん、雅子さまは幼稚園、高校、大学とアメリカで過ごしていますし、元外交官だから英語は完璧です。

私が心配したのは、トランプ大統領のことです。陛下が英語を話されると知って、余計なことを質問したり、陛下に失礼なことを言ったりしないかと心配だったのです。

しかし報道を見るかぎりは、そんな失言はなかったようでした。トランプ大統領も、さすがに天皇陛下の高貴な雰囲気を感じとって厳粛な気持ちになったのでしょう。

もっとも、たとえトランプ大統領がおかしな質問を口にしても、陛下はいつもの笑顔で聞き流して、適切な答えを返されたことでしょう。陛下の聡明さを思えば、心配することもなかったのです。

私は1976年1月に故郷のメルボルンに帰ったあと、陛下とは手紙や年賀状のやり取りを続けました。メルボルンの高校を卒業すると、東京外国語大学に留学するために再び来日しています。陛下と頻繁にお会いするようになったのはその頃で、一時期は月に2度ぐらい東宮御所に招かれました。土曜か日曜のことが多く、前日か当日に侍従さんから電話をもらって、昼過ぎぐらいに伺うのが恒例でした。

陛下とはプライベート用の応接室で、ソファに並んで座りました。陛下のご趣味は山登りとカメラですから、横に並んだほうが山の写真などを一緒に見やすいからです。

陛下と私が英語でおしゃべりしたのは、家庭教師を頼まれたからではありません。再来日の報告に御所をお訪ねしたとき、私が近況報告しながら、ふと思いついて英語で話しかけてみたのです。英語で文通していたことの延長というつもりでした。すると、陛下も英語で返事をされ、そのまま会話が弾みました。

陛下は日本語より、英語で話すときのほうがリラックスされている印象があります。きっと英会話を楽しんでおられるのでしょう。

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