次はトランプVS.ウォーレンと読む人が陥る罠 2020年の米大統領選予想は「間違いだらけ」
もしそんなことをしたら、健康な人はますます保険料を払わなくなってしまう。幸い?共和党が下院での多数を失い実現してはいないが、強制加入ではなくなったしわ寄せはすでに既存の保険料に跳ね返り、政府予算局の試算では今年のオバマケアのドロップアウトはすでに400万人を超えるといわれている。そんな中、民主党左派が掲げる国民皆保険(Medicare for all)に対抗すべく、ドナルド・トランプ大統領が練っている代替案は、聞こえてくる限りこの共和党のゆるゆるの法案に近い。
次の疑義は、今、主要メディアはウォーレン氏を「左翼のジャンヌ・ダルク」ように持ち上げるが、彼女の本質が本当に左翼的かどうかはわからないということだ。そもそも、彼女はオクラホマ出身であり、1970年代から80年代にかけて、ヒューストン大学とテキサス大学で教鞭をとっていたころの主張は、完ぺきな保守的市場原理主義者だったのである。その彼女がリベラルとして大統領選に挑戦するようになったのは、最終的にはハーバード大学で職を得て、そしてG・W・ブッシュ政権の顛末のリーマンショックをオバマ政権が事後的に検証した際、民主党議会が任命した不良資産救済プログラム(TARP)法案検証諮問委員会のトップに就任したことが大きい。
この時の彼女の議会証言は何度も生で見たのでよく覚えているが、破産法の専門家として、彼女は、リーマンショック後のショック療法によって、実際はアメリカの大手金融機関が国家の救済策で焼け太りして行く可能性を明確に批判していた。そして彼女の懸念が実現した今、大統領選に掲げた彼女の政策は、バーニー・サンダース候補のような社会主義のイデオロギーを前面に出すものではない。一つ一つの政策で、リーマンショックの救済で起こったモラルの低下を、逆サイドへ振ることで修正する内容になっている。
民主党の予備選はいまだに「混とん状態」
個人的にはこれに合理性を感じるが、予備選の本番が始まると、過去のウォーレン氏の主張が保守的だったことが攻撃対象になるだろう。つまりウォーレン氏は、トランプ大統領からは社会主義のレッテルを張られ、民主党内の戦いでは元共和党だといわれる。
結局のところ、まだ民主党の予備選は混とんとしている。中道のジョー・バイデン候補がウクライナと中国問題で撤退すれば、トランプ大統領側は株価を維持するのをやめ、社会主義が浸透した場合の恐怖を演出することは十分考えられる。
その際バイデン候補に代わる中道の大物として、最大手金融情報会社を創設したマイケル・ブルームバーグ氏の名前が出ている。だが個人的には大富豪で元共和党のブルームバーグ氏に可能性は感じない。そのような状況が来るのを待っている人がいるとすれば、それはやはりヒラリー・クリントン氏ではないか。
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