次はトランプVS.ウォーレンと読む人が陥る罠 2020年の米大統領選予想は「間違いだらけ」

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

いずれにしても、この状況下では、トランプ大統領の最大の敵はやはりアメリカ経済の行方だ。米中貿易協議よりも前に始まっていた世界景気の後退が、2020年の一番大事なタイミングでアメリカを襲ってくるリスクである。この最悪シナリオを避けるため、トランプ大統領はFEDを攻撃し、また市場に向けては自分でさまざまなノイズを発し、それで株価が下がると今度はツイートでショートカバーを誘発することを繰り返している。これはまさにマッチポンプのプロレス興行の手法。そしてそれを支えるのはアルゴリズムだ。

最新のデータでは、株式市場すべての参加者の30%、機関投資家の60%が人工知能(AI)によるアルゴリズムを利用し、取引全体のフローの60%が人間ではない運用者の判断によるものになっている。アルゴリズムを考える人間はスマートでも、まだマスコミなどのニュースのヘッドラインに直情的に反応するだけのアルゴリズムの動きはお世辞にもスマートとはいえない。この点、トランプ政権はその市場の特徴を理解し、利用することに長けている。

だが、それは裏を返せば「実態経済が株価よりも弱い」ということを隠すためでもある。今の時代、株価や国内総生産(GDP)の数字を意図的に作ることは不可能ではないが、株価からの印象では隠せないアメリカ経済の衰退の兆しも見えてきた。例えば、住宅市場である。

住宅価格の下落は「負のスパイラル」に突入

実は、郊外のアッパーミドル向けの一戸建て住宅の価格は、リーマンショックから10年経ってもそれ以前の水準まで戻していないところが多い。そこにトランプ政権の税制改革があり、東海岸のアッパーミドル層が多く住むコネチカット州などではひどい状況になっている。

その原因は、もはや一時的な理由ではない。具体的には、アメリカンドリームのフォーメーションが健在なら、子育て期に入ったミレニアル世代(1980年代に生まれ、2000年代前半に成人を迎えた層)は、都会から郊外に引っ越し、郊外のコミュニティを支えていなければならないはずだ。

ところが、ミレニアル世代はもはや郊外に住みたがらない。結果、住宅への需要が低下した自治体では、学校のレベルや施設を維持するために住民税を上げてきた。だが近年は住宅価格の上昇が住民税の上昇を下回り、そういう家はだれも買わなくなった。すると近隣住宅の価格を巻き込み、ますます住宅価格が下がるという「負のスパイラル」が始まったところが散見され始めたのである。

次ページ大都会のマンション価格も10%超の下落に
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事