世界の建築業界の巨人、日本の鉄道を変えるか サラグラダファミリアなど実績は多数

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小栗代表によれば、「われわれの先輩方が、頼まれてもいないのにロンドンの北東側を通って現在のセントパンクラス駅に乗り入れる現在の案を提案した」。当時のロンドンの北東エリアは廃れており、鉄道を通すことで都市再生の起爆剤にする考えだったという。

国鉄案とアラップ案が国会で議論され、結果としてアラップ案が採択された。それを契機にHS1のインフラデザインやプランニングなどの総合的な技術設計もアラップに任されることになったのだ。

古城のようなセントパンクラス駅の外観(記者撮影)

ユーロスターの発着駅であり、ロンドンの陸の玄関口となったセントパンクラス駅を訪れたことがある人なら、古城のような赤レンガ造りの駅外観と内部の未来的なプラットホームが織り成す調和に誰もが息を呑むに違いない。

旧セントパンクラス駅を国際駅として生まれ変わらせるために、既存建物の調査、保護、補強から必要なプラットホームの増設まで、必要条件を洗い出し、構造設計のみならず、建築設計、インテリアデザイン、輸送計画など多岐にわたる業務を担った。

鉄道事業に7000人のエンジニア

同駅の隣には「ハリー・ポッター」シリーズでもおなじみのキングスクロス駅があるが、こちらも歴史を感じさせる西コンコースに架けられた半円アーチの巨大屋根が想像を超える美しさを生み出している。

キングスクロス駅の巨大アーチ屋根(記者撮影)

屋根は単なる美の追求ではなく、「ターミナルの西側はさびれていたが、屋根を付けたことで人や車の流れが変わった」(小栗代表)。同社は構造設計に加え、設備・環境設計、歩行者モデリングなど総合的なコンサルティング業務を手がけている。

イギリス以外の世界各国でも駅舎、軌道、トンネルといったインフラ、そして車両、信号、電力など鉄道に関する多岐に渡る分野でエンジニアリング業務やコンサル業務を行っている。2018年に開業した香港と中国本土を結ぶ「広深港高速鉄道」から減圧されたチューブ内を高速列車が走行する「ハイパーループ」計画まで、多岐にわたるプロジェクトに参加している。鉄道事業では7000人のエンジニアが活動しているという。

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