「根拠なき株価上昇」を正当化するヤバイ市場

企業収益も世界情勢も暗くなるばかりだ

しかし、アメリカはこれまで課してきた追加関税を、遡って引き下げたわけではない。このため、さらなる米中通商交渉の悪化は避けられたという解釈はできたとしても、両国の経済にとって改善材料だ、とも言えまい。

並行して、アメリカは中国のウイグル自治区の人権問題への非難を強めており、一時騒がれたアメリカの資金の対中投資規制についても、引き続き検討はされていると推察され、全く消えうせたわけでもない。こうした諸点を踏まえると、やはり週末の米株高、米ドル高と、それによる日経平均先物の上昇は、やり過ぎの感が強いと言える。

陰りが強まる日本国内企業の収益動向

一方、目を日本の企業収益に転じると、予想以上に悪化が速い。

足元では、小売・外食など内需系企業を中心とする、2月本決算企業の、2019年3~8月期の決算発表が峠を越した。現在本格的に業況が悪化しているのは(日銀短観の業況判断DIに表れているように)製造業が中心であり、「非製造業の収益悪化が本格化するのは、10月の消費増税以降だろう」、と考えていた。

しかし、日本経済新聞の集計によれば、小売、外食、衣料品など消費関連企業65社の8月までの決算では、2半期(各6カ月ごと)連続で前年比マイナスだったとのことだ。これで消費増税の悪影響をかぶれば、一段と内需系企業の収益は悪化するだろう。

こうした悲観的な展望を受けて、セブン&アイ・ホールディングスが人員削減計画を、高島屋が店舗閉鎖を、それぞれ発表している。また、外需を主体とする企業でも厳しい状況が明らかになりつつある。産業用ロボットなどの大手・安川電機は2月本決算であるため、他の多くの製造業企業に先駆けて決算を発表したが、会社側は今期(2020年2月期)連結営業利益予想を、46%も下方修正した。業界統計でも、日本工作機械工業会は10月9日に9月の受注額を前年比で36%減と発表、12カ月連続のマイナスとなっている。

安川電機の11日の株価は、この下方修正を受けて軟調に推移したが、日本株全体については「これほど大きく下方修正したから、もう悪材料は出尽くしだろう」と都合のよい解釈をし、堅調な株価推移となった。しかし、今月後半から来月前半に予定されている、3月本決算企業の決算発表では、外需製造業中心に厳しい内容となることは必至であり、日本の株価が全般に安穏としていられるとは見込みがたい。

筆者は米調査期間であるファクトセットが集計するアナリスト予想の平均値をみているが、下方修正の傾向が未だに強い。QUICK社による「QUICKコンセンサスDI」でも、下方修正が優勢なままだと報じられている。

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