「入場料を取る書店」がまさかの大流行した理由 お客はいったい何にお金を払うのか?

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おしゃれで、空間的にゆったりとした余裕があるカフェ、といった感じだ。

ソファー、テーブル、さらに床の間なども用意され、お客は思い思いの姿勢でくつろいで本を読んでいる。Wi-Fiも使えるので、パソコン作業もできる。

営業時間は朝9時から夜11時まで。本は読み放題。コーヒーは無料で何杯もおかわりし放題。食事もできる。大きなビーフの塊がゴロッと入っているハヤシライスもおいしい。制限時間はなく、本を読みながら飲食ができるので、何時間でも滞在できる。

店内には3万冊の蔵書がある。新刊だけではない。書店員が目利きした本ばかりだ。1冊本を取ると、その下には関連した別の本が出てくる。こうして新たな本との運命の出合いを提供してくれる。気に入った本は買うこともできる。

読んだ本は戻す必要がない。店内に何カ所かある返本台に置いておけばいい。今や、休日には10人以上が入店待ちという人気店である。

街中のカフェで本を読んだり仕事をしたりする人は多いが、長居をすると時間も気になる。文喫なら、時間を気にすることなくゆったりと本を読み、食事をし、仕事もできる。もし六本木で時間に余裕があれば、ぜひ立ち寄ることをお勧めしたい店だ。

お客が何にお金を払っているのかを見極めよ

とはいえ、収益が気になるところだ。文喫は多い日には200名ほどが来店。滞在時間は平均3~4時間。来店客の4割が書籍を購入するという。これは通常店舗の4倍だ。さらに客単価は通常店舗の3倍である。入場料、飲食料、本の売り上げを全部合わせると、収支が取れているという。

文喫は出版取次で最大手の日本出版販売(日販)のグループ会社が運営している。出版社と書店の間を取り次いで本をスムーズに流通させるのが主な業務だ。日販は書店の価値を高める挑戦を行っている。文喫は、そんな挑戦の1つなのだ。

青山ブックセンター跡地の活用を任された日販の社員は、悩んでいたという。あの名店・青山ブックセンターも赤字だった場所だ。普通の書店にしても、まず収益化は期待できない。

一方で、この記事を読んでいるあなたは、書店に行くと「今まで知らなかった、何か新しい本と出合えるのではないか?」と無意識にワクワクすることはないだろうか?「知らなかった知識と、偶然に出合う」というリアル書店ならではの体験を提供するためには、ゆったりと余裕を持ってくつろぎ、本を読みながら時間を過ごす必要がある。

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