カローラから始まったカーナビ専用機の大転換 CD/DVDプレーヤーも消え、コネクテッド強調

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「ディスプレイオーディオ」導入の背景に、DCM(データ・コミュニケーション・モジュール)の存在がある。

DCMは車載通信機器で、基本的には1分に1回の頻度で車載コンピューターネットワークの情報を「モビリティサービス・プラットフォーム」というトヨタ専用クラウドサービスに送信し、さまざまなサービスに活用する。DCMは2020年までに、日本・アメリカ・中国で販売する乗用車に標準装備される。

前述にように「ディスプレイオーディオ」には数多くのオプション設定があるが、実は工場出荷の状態で「全部乗せ」になっており、DCMからの指示で「機能別の窓を開けて、機能を作動させる」(トヨタ関係者)という仕組みだ。

ディスプレイオーディオが主流になる可能性

こうした大がかりなデータエコシステムを自動車メーカー各社が独自開発するのは、費用対効果の面で得策ではない。トヨタと資本関係または業務提携関係にあるダイハツ、マツダ、SUBARU、そしてスズキはDCMとディスプレイオーディオを今後、標準装備化する可能性は高い。

横浜市内で開催された、新型カローラのメディア試乗会にて(筆者撮影)

こうしたトヨタ陣営の動きに当然、日産アライアンスとホンダも対応せざるをえなくなる。そうなると、日本の新車から近年中に、カーナビ専用機は完全になくなってしまう。ミニバン向けなど、大型ディスプレイのカーナビ専用機の需要は、一定数は残るかもしれない。だが、ディーラーオプションとしては消滅し、アフターマーケットのみの販売になりそうだ。

1990年代から日本が世界をリードして技術革新が進んできた、カーナビ専用機。クルマのコネクテッドサービス本格化に伴い、姿を消す運命にある。

桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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