東急電鉄社長「私は混雑・遅延をこう解決する」 分社化で乗客サービス改善の迅速化狙う

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さらに、現在目黒線で進めている8両化によって、「目黒線が便利になれば、日吉とあざみ野の中間に住んでいて、これまであざみ野から田園都市線で都心に向かっていた人が、日吉から東横線・目黒線で都心に向かおうと考える人が出てくるかもしれない」と、渡邊社長は話す。「他路線やバスなどさまざまな方策で田園都市線の負荷を減らしたい」。ちりも積もれば山となる。東急はこうした「ちりつも」作戦で田園都市線の混雑率を減らす構えだ。

新たに発足した「東急電鉄」の渡邊功社長(記者撮影)

田園都市線は全駅ホームドアがもうじき完了する。田園都市線は踏切がなく、ATO(自動列車運転装置)を導入すれば、理屈のうえでは自動運転が可能になる。これについて、渡邊社長は「大きな検討テーマ」としたうえで、「ベースとなるのは安全第一。効率性だけで判断することはしない」と話す。

むしろ、渡邊社長が田園都市線の技術革新として考えているのは「次世代保安装置」の導入である。次世代保安装置とは、CBTC(無線式列車制御システム)。列車の位置を正確に把握することによって、従来よりも列車間隔を短くすることができる。つまり、混雑時間帯における電車の運行本数が増えるため、輸送力が増強され混雑緩和につながる。その導入時期については、「発表できる段階にはないが、メドは立っている」(渡邊社長)。現在「検証を行なっている」といい、自動運転よりも早く導入される可能性は高そうだ。CBTCが導入されれば混雑緩和への決定打となるかもしれない。

渋谷駅の改良は「時間がかかる」

田園都市線には渋谷駅地下ホームを改良・拡充する計画がある。東急電鉄の親会社・東急の髙橋和夫社長は、2018年9月10日付記事「東急社長が語る田園都市線混雑解消の『秘策』」で同計画について言及している。

「渋谷駅はホームが混雑し乗客の乗り降りに50秒程度かかっている。そのため後続電車が駅の手前で待たなくてはならず、列車が遅延する。これが輸送量の減少につながっている。ホームの数を増やせば、2つの番線から交互に発着できるようになり列車の本数を増やせる」と髙橋社長は述べている。

つまり、渋谷駅ホームの改良・拡充によって遅延解消だけでなく、運行本数が増えることで、混雑緩和にもつながるという。ただし、渡邊社長は「喫緊の課題だと認識しているが、取り組みには時間がかかる」としており、長期的な取り組みとなりそうだ。

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