東急電鉄社長「私は混雑・遅延をこう解決する」 分社化で乗客サービス改善の迅速化狙う

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渡邊社長は東急の蒲田駅と京急蒲田駅を結ぶ「蒲蒲線」構想にも言及した。東急多摩川線を京急蒲田駅までつなぐことにより、東横線沿線の利用者は多摩川駅経由で羽田空港に向かうことができる。大田区が主導で進めており、東急も全面的に協力している。

「これからは新空港線という呼び方でぜひお願いしたい」と渡邊社長は強調する。蒲蒲線という呼び方にはローカル的なイメージがあり、羽田空港へのアクセス線という目的が伝わらないからだという。

蒲蒲線「新空港線と呼んで」

新空港線の完成で、これまでJRで品川に出て羽田に向かっていた利用者が渋谷から東横線・多摩川線経由で羽田に向かうようになれば、東急にとっては収益面で大きく寄与する。

また、2022年度下期には東急新横浜線が開業し、東海道新幹線の新横浜駅で接続する。空港と新幹線の両方とつながれば東急沿線のブランド力向上というメリットも得られる。

新空港線から京急空港線へそのまま乗り入れることができればベストだが、現在構想されている案では、京急蒲田の新空港線新駅は地下に造られる。そこから地上にある京急空港線の蒲田駅に乗り換えるわけだ。

東急電鉄の城石文明副社長によれば、現在は「最終局面を迎えつつある段階」。今年度内に方向性を出し、新年度早々には事業化を決定して整備主体となる第三セクターを設立したいという。羽田空港アクセス線ではJR東日本がすでに環境影響評価手続きに着手しており、一歩先行しているが、新空港線も早急の建設開始で巻き返しを図りたいところだ。

鉄道事業を分社化することのメリットとして、渡邊社長は「現場に近いところに経営の重きが置かれるとともに、スピード感のある経営体制が取れる」と述べた。新生・東急電鉄は分社化によって乗客サービスを迅速に改善できるか。その取り組みに要注目だ。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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