トランプはアメリカ初の罷免大統領になるのか 「ウクライナゲート」で弾劾調査開始の波紋
今後、「ウクライナゲート」に関わる新事実が判明していく中、弾劾に対する国民の支持がまだ伸びる可能性はある。ペロシ下院議長の弾劾調査開始表明後、大統領の疑惑に関し新事実が徐々に判明する中、民主党内で弾劾に向けた機運は高まり、共和党内でも弾劾支持まではいかないが大統領の行為に懸念を表明する者が出るなどわずかながら亀裂が見え始めた。
「我々は戦争の真っただ中」。トランプ大統領は9月26日に弾劾に対し、このように宣言。トランプ政権そして共和党は内部告発の情報をフェイクニュース、民主党による魔女狩りと訴え、バイデン前副大統領の疑惑問題に話題を切り替えようとする手法で反撃している。
モラー報告書と同様に内部告発文書などの信憑性に、共和党は疑問を投げかけている。これまでのように社会の2極化を巧みに利用し、スキャンダルを民主党の陰謀とし、「民主党 vs. 共和党」の戦いとして共和党支持基盤を団結させて対抗する戦術に出るだろう。だが、その手法が今回も通用するかは不透明だ。
民主党vs.共和党で、政策議案の審議は難航
「ウクライナゲート」をめぐる調査はまだ始まったばかりだ。民主党は全貌が見えてくるまで追及を弱めないであろう。今後、下院は政権に対し召喚状を提出し、情報提供や公聴会での発言を求めることが予想される。9月26日にジョセフ・マグワイア国家情報長官代行が下院情報特別委員会の公聴会で証言し、民主党議員からは厳しい追及がみられた。9月27日、下院はマイク・ポンペオ国務長官に召喚状を出し、「ウクライナゲート」に関わる文書提出を要請した。
さらに、トランプ大統領とゼレンスキー大統領の電話会談全文提出に加え、電話会談の要旨に記載されていた大統領の個人弁護士ルディ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長やウィリアム・バー司法長官や、内部告発文書に記載があったマイク・ペンス副大統領などの関係者に公聴会での証言を求める可能性が高い。また、これに対し、トランプ政権側は大統領特権を駆使して抵抗するだろう。
トランプ大統領とゼレンスキー大統領の電話会談以外にも、ペンス副大統領のウクライナ訪問キャンセルなど、同国政府にトランプ政権がさまざまな方面から圧力をかけていた疑いがある。さらには、ウクライナだけでなくサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子やロシアのプーチン大統領など他国の首脳との会談記録文書についても、安全保障上の理由ではなく政治的な理由で機密文書の電子保管システムに保存したことがあるとの疑惑も取り沙汰されている。問題はウクライナだけにとどまらない可能性もある。
2020年大統領選に向けて、既に議会では多くの法案がなかなか前進しない状況にある。今後は弾劾調査が進む中、特に下院では議会アジェンダが後回しとなり、ますます膠着状態に陥るだろう。「民主党 vs. 共和党」の戦いが激しさを増すことは必至で、インフラ整備法案を成立させることなどは極めて困難だ。
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