マツダ「CX-30」は、C-HRやヴェゼルに勝てるか 10月下旬に発売、アウディQ2とも真っ向勝負

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マツダは今年5月に発表した中期経営方針で、収益性向上に向けた施策として、SKYACTIV-Xに代表される上級エンジンモデル投入を掲げた。従来のエントリー価格を維持しつつ、価格帯の拡大を図る方針だ。

CX-30は239万2500円~371万3600円と、ハイエンドモデルの価格がエントリーモデルの1.5倍を超える。国内では同じ車種でここまで価格の差が開くのは珍しい。丸本社長は「SKYACTIV-Xは導入初期ということもあり、少し高めの価格付けとした。お客さんにどのように評価されるか見てみたい」と自信を示す。

業績回復の起爆剤になるか

マツダは高い動力性能と燃費を両立した革新的なSKYACTIVエンジンや魂動デザインの導入で快進撃を続けてきたが、足元の業績は低迷している。2019年4~6月期の営業利益は70億円と、前期比79%の減益となった。最大の要因は主力市場の北米が赤字に転落したことだ。

米国では新車市場が頭打ちとなり競争が激化する中、4月に投入したMAZDA3が期待通り売れていない。また、売れ筋のCX-5も競合するトヨタの主力SUV「RAV4」刷新のあおりを受けて販売が低迷。2019年1~8月のアメリカの販売台数は前年同期比11.5%減の18万9000台と苦戦している。8月に20カ月ぶりに前年同月比でプラスに転じたものの、全体需要が前年同期比0.1%増と弱い中では、厳しい戦いは続く。

マツダの丸本明社長はCX-30について「今後のマツダを支えていく極めて重要な商品だ」と語る(撮影:梅谷秀司)

その点でまったく新しい車種であるCX-30の投入は反攻のチャンスとも言える。「MAZDA3が最初うまく行っていない国をCX-30で補うことができたら」と丸本社長は期待を寄せる。

マツダとしては商品の価値を訴求し、インセンティブ(販売奨励金)を抑制する売り方は今後も貫くつもりだ。その点でどれだけ多くの人にCX-30の価値を伝えることができるか、リアルな接点づくりも大事になる。これまで接点のなかった層に販売店に足を運んでもらえれば、CX-30の購入につながらなくても、CX-3やCX-5、MAZDA3に関心を持ってもらうきっかけにもなる。

マツダの世界シェアは2%。ニッチなメーカーだからこそ、エッジの効いた商品で優良な顧客を囲い込むことが生きる道になるはずだ。将来の基幹車種を目指すCX-30の成否はマツダブランドの方向性をも決める使命を負う。

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年10月から東洋経済編集部でニュースや特集の編集を担当。

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