JR北海道「2人の社長」が相次いで自殺した背景

改革提言ゆえに除名された組合員も「謎の死」

JR北海道労組は、JR北海道社員の約8割が加入する同社の最大労組だ。また前回記事で触れたJR東日本の最大労組「東日本旅客鉄道労働組合」(JR東労組)と同様に、警察当局が今なお、「革マル派」(日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派)が、〈影響力を行使し得る立場に相当浸透している〉(2018年2月23日政府答弁書)とみる、「全日本鉄道労働組合総連合会」(JR総連)傘下単組で、当局が「革マル派とJR北海道労組の関係について鋭意解明に努めている」(2013年11月22日、衆議院国土交通委員会での警察庁官房審議官答弁)とする組合でもある。

JR北海道では2011年5月27日、石勝線を走行中の釧路発札幌行き特急「スーパーおおぞら14号」が脱線。トンネル内で停止したところ炎上し、乗客、乗員79人が負傷するという大事故が発生した。

この「石勝線特急脱線・炎上事故」を機に、同社が国鉄・分割民営化以降抱えてきた宿痾(しゅくあ)が噴き出すかのように、事故や不祥事が相次ぐのだが、中島社長が自殺するのは、この事故から約4カ月後のことだった。

そして、前述の社員宛ての遺書で、〈「お客様の安全を最優先にする」ということを常に考える社員になっていただきたい〉とつづった中島社長の願いもむなしく、翌2012年2月には函館線で、3月には留萌線で普通電車が脱線。さらに翌2013年の4月から7月にかけては「北斗20号」(函館線)、「スーパーカムイ6号」(同)、「スーパーおおぞら3号」(石勝線)などの特急列車で、出火事故が頻発した。

政府が会長と社長を更迭

さらに9月19日には、函館線大沼駅構内で貨物列車が脱線。この事故によって、JR北海道がレールの異常(幅の広がり)を把握しながら1年近く放置していたことが判明した。その後、道内全域の約270カ所で同様のレール異常が放置されていたこともわかり、国土交通省は特別保安監査に乗り出した。

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ところが同年11月、この国交省による特別保安監査の過程で、JR北海道が監査妨害を目的に、「レール検査データの改竄」を長年にわたって行っていたという、JR史上、他に例を見ない不祥事が発覚。前出の坂本相談役が自殺したのはこの約2カ月後のことだった。

坂本相談役の遺体が、余市港沖で発見されてから9日後の2014年1月24日、国交省は、2011年の石勝線の特急脱線・火災事故に続いて2回目の、鉄道事業法に基づく「事業改善命令」と、国鉄・分割民営化以来、初めての、JR会社法(旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律)に基づく「監督命令」を発令。

さらに2月10日、レール検査データの改竄問題で、法人としてのJR北海道と社員を、鉄道事業法違反の罪で刑事告発し、告発を受けた北海道警は同容疑で同月12日、JR北海道本社など関係先5カ所の家宅捜索を行った。

もはやJR北海道のガバナンス(企業統治)は完全に破綻しており、政府は4月1日、当時の小池明夫会長と野島誠社長を更迭した。

「民営会社」であるはずのJR北海道の人事を政府が決定できるのは、前述のJR会社法によって、同社が、国交省が所管する独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」が、株式の100%を保有する「特殊会社」に定められているからだ。このためJR北海道の社長の選任や解任をめぐっては閣議での了承が必要となり、同社の人事には、政府の意向が反映される。

次ページ政府が人事に介入するも…
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