「2050年日本の破局」を防ぐ持続可能シナリオ AIが示す人口減少時代の「地域分散型」の未来

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時代の大きな流れを振り返りますと、下の図に示されているように、明治の初め以降の日本は、急激に人口が増加し、経済の規模も大きくなっていきました。この人口増加の時代とは、ほかでもなく「すべてが東京に向かって流れる」時代であったと言えるでしょう。中央集権化がどんどん進んでいった時代とも言えます。

それが、2000年代後半から日本は人口減少社会となり、これまでとは大きく異なる動きが進んでいくことになります。先ほど述べた若い世代の意識や行動は、こうした新たな時代の流れを先取りしているとも考えられます。

「人口減少社会のデザイン」が令和時代の中心テーマ

思えば、今年は元号が令和に代わった年でもあります。

振り返れば、「昭和」の時代とは、人口や経済が「拡大・成長」を続け、また人々が“集団で1本の道を登る”時代だったと言えます。

「平成」の時代は、その間に日本の総人口は増加から「減少」に転じ、かつ“失われた〇〇年”ということが語られ、さまざまな社会的変化が生じた時代でもありましたが、しかし経済社会の基調をなしたのは、明らかに昭和的な「拡大・成長」志向の発想ないし価値観でした。

高度成長期の、ジャパン・アズ・ナンバーワンとまで言われた“成功体験”の残り香がそれだけ強固だったのです。

このように考えていくと、令和という時代の中心テーマは、ほかでもなく「人口減少社会のデザイン」ではないでしょうか。

そこでもっとも基本となるのは、昭和(~平成)的な「拡大・成長」志向そして“集団で1本の道を登る”発想から抜け出し、あるいはそこから自由になり、「持続可能性」や個人の創発性に軸足を置いた社会のあり方に転換していくことです。

そうしたテーマについて、具体的な政策対応から、超長期のタイムスパンにわたる人類史的な視座あるいは原理的な考察までを包含する形で、私なりに論じたのが本書の内容となっています。

現在の日本では、かなり大胆ないし異端と思われるような提言も記していますが、冒頭の「2050年、日本は持続可能か?」という問いに象徴される、日本の現状への強い危機感から『人口減少社会のデザイン』を書きました。読まれた方々からの忌憚のないご意見を期待しています。

広井 良典 京都大学 人と社会の未来研究院教授

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ひろい よしのり / Yoshinori Hiroi

1961年岡山市生まれ。東京大学・同大学院修士課程修了後、厚生省勤務後、96年より千葉大学法経学部助教授、2003年より同教授。この間マサチューセッツ工科大学(MIT)客員研究員。2016年より京都大学教授。専攻は公共政策及び科学哲学。限りない拡大・成長の後に展望される「定常型社会=持続可能な福祉社会」を一貫して提唱するとともに、社会保障や環境、都市・地域に関する政策研究から、時間、ケア、死生観等をめぐる哲学的考察まで幅広い活動を行っている。著書に『コミュニティを問いなおす』(ちくま新書、大佛次郎論壇賞)、『日本の社会保障』(エコノミスト賞受賞、岩波新書)、『人口減少社会のデザイン』(東洋経済新報社)など。

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