「営業利益率54%」キーエンスに株主反発のわけ 高収益に満足も、10%程度の低配当に不満

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平均年収は2100万円で、それを支えているのはまさにこの高い収益力にある。高収益の秘密は工場を持たないファブレス経営や製品の研究開発力、データに基づく合理性を極めた直営営業や社風にある。多くの機関投資家は「ビジネスモデルや事業の執行力はパーフェクト」だと口をそろえる。

にもかかわらず、株主総会の議決において多くの反対が出るのは、配当をはじめとした株主還元策を不十分だとみる投資家が多いためだ。2019年3月期の配当は年間200円。1株利益は1864円で、3割配当がスタンダードになりつつある配当性向は約10%にすぎない。

キーエンスのバランスシートを確認すると、連結自己資本比率は94.4%、利益剰余金は2019年6月20日時点で1兆5585億円に積み上がっている。現預金だけで4348億円を保有しており、複数の機関投資家は「資本の使い道も不明で、こんなに貯める意味が理解できない」と不満を漏らす。

キーエンスに対する株主側の不満は今になって始まったことではない。「すでに10年以上、多くの機関投資家が(配当政策に)反対を貫いてきた」(信託会社ファンドマネジャー)というのだ。臨時報告書として株主総会の議決権行使割合が公表されるようになった2011年以降の12回の総会のうち、2018年を除く11回で剰余金処分案への賛成が7割を下回っていた。

直近5年間は配当を6.6倍に増やすが・・・

会社側も株主の「不満」を理解している。キーエンス経営情報室長の木村圭一取締役は「(2014年3月期の60円から2019年3月期の200円まで、2017年1月に株式1株を2株に分割)直近5年間で配当を6.6倍に増配している。また、(キャピタルゲインと配当の合計を株価で割った)TSR(株主総利回り)は5年間で343%、10年間で773%とTOPIX平均のそれぞれ145%、214%を大幅に上回った」と強調する。

実際、ボストンコンサルティンググループが出している「2019企業価値創造に優れた大型企業ランキングTOP50」では、(2014年からの)5年間のTSRは世界第28位となっている。木村氏は「世界的に株主リターンが高い企業だと評価されており、今後もリターンの最大化を図っていきたい」と話す。

ただ、日系機関投資家のあるアナリストは「株式市場で平均的な配当性向に基づく株主還元策などを行っていれば、株価はより高くなり、もっと利益を出せていたはず」と主張する。「ファブレスで大規模な工場建設などの投資はないはず。剰余金の規模から考えても自社株買いや株式分割などの施策があるべきでは」(複数の外資系機関投資家)など、反対する株主に共通するのは株価が本来もっと上昇しているはずだという考えだ。

これらの意見に対し、キーエンスは「事業環境が大きく変化するグローバル経済において、短期的な資金対応ではなく、中長期的な業績拡大のための判断が企業価値の最大化につながる」(木村氏)と株主に理解を求める。

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