楽天モバイル「格安プラン」だけで勝てない理由 災害時の通信品質や大容量プランに不安感
だが、楽天が実際に安いプランを打ち出しても、すんなり顧客を獲得できるとは限らない。既存の大手キャリアには、楽天モバイルにはない別の大きなセールスポイントがあるためだ。
1つは、有事も含めた通信品質だ。大手キャリアはこれまでの事業の積み重ねによる保守やセキュリティなどの技術の蓄積に加え、利用者が最も通信を使いたい災害時への備えも手厚い。
例えば、NTTドコモは基地局の一部が災害などで稼働できなくなる場合に備え、広範囲の通信をカバーできる災害時専用の大ゾーン基地局を全国に106も用意している。KDDIは海上から地上に電波を送ることができる船舶型基地局を持つ。昨年9月に起きた最大震度7の北海道地震でも、両社はこうした設備をフル稼働して早期の通信回復につなげた。
他キャリアの「超大容量プラン」にどう対抗?
ある業界関係者は「大災害時には、楽天モバイルが自前のネットワークを使う都市部のMNOはなかなかつながらない一方で、ドコモやauの回線を使う楽天モバイルのMVNOはつながる、ということも起きうるだろう」と話す。新参者の楽天モバイルに対しては、平時の通信品質自体を心配する声まである。
また、大手キャリアは超大容量のプランもセールスポイントだ。ソフトバンクの定額制の月50GBの超大容量プランなどはデータ使用量の多いユーザーから人気を集めている。auもデータ使用量無制限をうたうプランを7月に開始した。動画やゲームなど様々なコンテンツをスマホで楽しむ流れが加速するなかで、こうした超大容量プランの需要は今後も拡大していく見通しだ。当然ながら、高い客単価も見込める。
対して、楽天モバイルが開始当初からこうしたプランに対抗するのは簡単ではないはずだ。都市部以外の大半をKDDIへのローミングに当面頼るため、超大容量や無制限の定額プランを出せば、KDDIに支払う接続料が大きく膨らんでしまうからだ。KDDIとの契約次第になるが、自前の回線でカバーできるエリアがある程度広がるまでは、大容量ユーザーに訴求しにくいかもしれない。
そうなれば、中小容量のユーザー獲得にも影響を及ぼす可能性がある。大手キャリアが家族複数人でのセット割(3人以上の家族で加入すれば、月額料金から1人1000円引きなど)を拡大する中で、家族に大容量ユーザーがいれば、家族割のセット対象となる中小容量のユーザーもまとめて囲われてしまうかもしれないからだ。
詳細はまだわからないが、現時点で言える楽天モバイルの「売り」は、三木谷氏が示唆する価格の安さのみ。通信の安心や安定、大容量を求めるユーザーも多い中で、まずは低料金で一点突破を図るのか。それとも何らかの「秘策」があるのだろうか。
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