日経平均株価2万円は岩盤でも鉄板でもない 機械が作る「トランポリン相場」が終わるとき

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こうしてトランプ発言にかきまわされている、とは言っても、かつてと比べると、株価が上がるにせよ下がるにせよ、以前ほどの振れ幅ではなくなってきているように思われる(その点は、前回のコラム「日経平均株価が2万円を大きく割り込む『必然』」でも述べた)。

これまで当コラムで述べてきたように、米中通商交渉の勘所は、両国の主要な交渉事項が、米中間の貿易不均衡の金額ではなく、「構造問題」(知的所有権の侵害、巨額の補助金、先端技術の移転強要)にあり、その肝心の点で、両国間の溝が深いことにある。

「不透明要因が多すぎる世界」という構図は不変

では、なぜ中国側が協議に応じる構えを続けているかと言えば、中国としては「外交的な努力を続けている」「中国側に落ち度はない」「交渉が進まないのはアメリカが悪いからだ」といった、国際社会に向けてのアピールのためだろう。

このように「どうせ米中間の通商面での衝突は一朝一夕には解決しない」、と大きな展望を築けば、トランプ大統領がどのような発言をしても、流れは世界的な株価下落だ、と決め打ちすることができる。「人間の」投資家たちが、こうした大局観を抱き始めていることが、トランポリン相場ではあるものの、その振れ幅が小さくなってきていることに表れているのかもしれない。

米中間の通商面での交渉難航が、株価下落基調を意味する、と述べたのは、「貿易戦争」が直接米中など主要国の経済を傷めつける効果が大きい、と考えているからではない。米中間の問題だけではなく、「合意なし」に向けて突進しているように見えるブレグジット(英国のEU離脱)の行方や、香港情勢、さらには最近話題にこそなっていないが、イランを含めた中東情勢の不安定さなど不透明要因が多すぎる。

世界で行動する企業にとっては、経済が必ず悪化すると決まってはいなくても「そのリスクが高い」「よく先行きがわからない」、ということになれば、企業は設備投資や建設投資、生産、人員採用などの企業活動を委縮させてしまう。それが実体経済に与える影響は軽視できない。

最近アメリカから聞いた話だが、同国経済最大のリスクは、トランプ政権の政策の不透明さだ、と唱える向きが増えているようだ。

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