新体制4年の大井川鉄道、劇的に変わった経営 親会社エクリプス日高が静岡で仕掛ける動き

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大井川鉄道を取り巻く環境はさらに変化している。今年4月1日から運営が民間委託された富士山静岡空港は、大井川鉄道の新金谷駅からバスでわずか18分という近さだ。この立地を活かそうと、7月20日から1年間の予定で、路線バスの実証運行が始まった。

実証運行が始まった、富士山静岡空港と新金谷駅を結ぶバス。LCCチェジュ航空の広告ラッピングを施している(筆者撮影)

大井川鉄道グループの大鉄観光バスの27人乗り中型車に、LCC(格安航空会社)チェジュ航空の広告をラッピングした、なかなか派手なバスだ。新金谷から富士山静岡空港間に8本、逆方向は6本の設定がある。片道500円で、途中のJR金谷駅前発着だと400円。ただし、新金谷―金谷間だけの乗車はできない。

専用バスを使いながら往復の本数が違ったり、新金谷行きの初便が「きかんしゃトーマス号」はもちろんのこと「SLかわね路号」にもわずか10分差で間に合わなかったりと、改善の余地は垣間見られるが、大井川鉄道への観光客誘致に活用できる素地は十分にある。

グループはさらに広がる?

ところで、大井川鉄道は永らくSLの動態保存の先駆者として活躍してきたが、動態保存に欠かせないのがボイラーのメンテナンスだ。これを手がけてきた東海汽缶も、2018年4月にM&Aによってエクリプス日高の子会社となり、大井川鉄道とはグループ会社になった。

エクリプス日高は、企業再生の発端となった北海道では静内エクリプスホテル1軒のままなのに対して、静岡県内では大井川鉄道をはじめ惣菜・弁当、さらにはボイラーの保守を担う会社までグループに加え、積極的な拡大を続けている。エクリプス日高が経営に参画した2015年度以降、大井川鉄道は黒字に転換し、同社による再建は着実な成果を上げているが、その実績が静岡でのグループ拡大にもつながっているといえそうだ。

そんな中で、大井川鉄道が沿線の名所である「SLビュー」のホテル運営に乗り出したのは、親会社やグループ各社との連携を生かすことができるという点から見ても、自然な流れだったといえるだろう。

この先、静岡県内でさらにグループ企業を増やしていくのか、そして各事業の間にどんな相乗効果を生むことができるのか。鉄道の運営にどのような効果や影響をもたらすのかも、この先の展開で注目されるところだ。

伊藤 博康 鉄道フォーラム代表

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いとう ひろやす / Hiroyasu Ito

1958年愛知県生まれ。大学卒業後に10年間のサラリーマン生活を経て、パソコン通信NIFTY-Serveで鉄道フォーラムの運営をするために脱サラ。1998年に(有)鉄道フォーラムを立ち上げて代表取締役に就任。2007年にニフティ(株)がフォーラムサービスから撤退したため、独自サーバを立ち上げて鉄道フォーラムのサービスを継続中。鉄道写真の撮影や執筆なども行う。

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