トヨタ下請けに春闘の試練 賃上げ機運で大手と差

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2月3日、アベノミクスの試金石として今春闘での賃上げ期待が高まる中、トヨタ自動車を主要取引先とする中小サプライヤーが苦渋の決断を迫られている。写真は2012年10月、ブリュッセルで撮影(2014年 ロイター Francois Lenoir)

[名古屋市 3日 ロイター] - アベノミクスの試金石として今春闘での賃上げ期待が高まる中、トヨタ自動車<7203.T>を主要取引先とする中小サプライヤーが苦渋の決断を迫られている。完成車・1次部品大手が円安の恩恵で海外向けを中心に大きく業績を改善させる一方、それとは対照的に、国内市場に頼る2次以下の下請けの多くがリーマン・ショック前の利益水準も回復できていないためだ。

新興国と先進国の両市場で競争に直面するトヨタは、開発効率化と原価低減を目指す新たな戦略を展開している。国内の中小サプライヤーが同社との取引を継続するには、今まで以上のコストダウンが不可欠。それに加えて賃上げに踏み切るためには、さらに利益を削るという厳しい選択が避けられない。

「この状況でゼロという訳にはいかない。定期昇給として1000円か2000円のレベル、あとはボーナスだろう」──。愛知県内にあるトヨタの2次サプライヤー幹部は、賃上げの方針についてこう明かす。「(賃上げは)相場観と(自社の)業績を反映し決めているが、売り上げも利益も出なくなりつつある」。

アベノミクス下の円安が裏目に

従業員百数十人規模の同社の経営が一変したのは、リーマン・ブラザーズの破綻が引き金だった。トヨタの国内生産台数が右肩上がりに増え、年を追うごとに収益が拡大していた同社の経営は、リーマン・ショックによる世界的な信用収縮が起きた08年秋を境に様変わりし、国内での受注は減少に転じた。

また第二次安倍晋三政権発足後に多くの輸出関連企業が円安の恩恵を受ける中、同社は逆に、苦労して立ち上げた東南アジア工場で量産している日本向け部品の収益が減少するという皮肉な現実に直面している。リーマン・ショック以前に5%あった営業利益率は今や2%にも満たない水準。

さらに取引先からの納入価格の定期的な改定と、コストカット要請も同社を苦しめる。「潰れるまでやられるのか、という気持ちになる」と同幹部はため息をつく。

一方のトヨタは、円安を追い風に業績は大きく回復している。2014年暦年のトヨタのグループ(日野自動車<7205.T>、ダイハツ工業<7262.T>を含む)生産計画も、前年比3%増の1043万台を計画する。

こうした流れを受け、トヨタ自動車労働組合は組合員に対し、今年の春闘でベースアップ(ベア)に相当する賃金改善分を組合員平均で4000円、年間一時金では月給6.8カ月分を会社側に要求する案を先月30日に提示した。ベアの要求は5年ぶりとなる。

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