トヨタ下請けに春闘の試練

賃上げ機運で大手と差

トヨタ新戦略への対応

もっとも、トヨタにも危機感がある。13年暦年のグループ全体での販売台数は世界首位を維持したものの、2位以下では独フォルクスワーゲン(VW)や米ゼネラル・モーターズ(GM)が、虎視眈々とトップの座を狙っている。新興国メーカーも追い上げの兆しを見せている。

トヨタが新たな世界戦略として進めているのが、設計開発・調達など各分野にまたがる革新活動である「トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー(TNGA)」。これにより開発された次期プラットフォーム(車台)を採用した新型車を15年に発売する方針。車種ごとに異なる部品の共通化を進めることで、調達コストの削減も目指し、自社の競争力を強化する考えだ。

サプライヤーにとってTNGA関連の共通部品は、数多くの車種にまたがって搭載されることが期待できるため、受注すれば大きな収益増が見込める利点がある。半面、トヨタが求める厳しいコスト水準に対応できなければ、大量の受注を競合他社に奪われるリスクもある。当然ながら、コストアップにつながる賃上げは慎重にならざるを得ない。

愛知県内の別のサプライヤーの幹部は、今春闘ではベア容認やむなしという立場だが「これからは(国内生産が)縮小傾向の中、固定費を上げるのは難しい」とこぼす。その上で「今はいいかもしれないが、2、3年後を見た時にベアをずっとやれるかというと、とてもじゃないが困難だ」との見方を示す。

中小の賃上げは限定的に

トヨタの状況について、サプライチェーンマネジメントが専門の松尾博文・神戸大学大学院経営学研究科教授は、「(中小企業に対し)厳しい要求はしているが、無理な要求はしていない」と指摘する一方、「そういう『傘』に入っていない下請けが日本にはたくさんある」と述べる。その上で、原材料価格などの上昇の影響を転嫁できなければ、中小サプライヤーの賃上げは限定的なものにならざるを得ないとの見方を示す。

トヨタの下請けだけでなく、賃上げの判断に苦慮する中小企業は全国に広がっている。日本商工会議所が先月31日に発表した全国の中堅・中小企業の14年度の賃上げ調査(対象3128社、ヒアリング期間1月17日─23日)によると、「賃金を引き上げる予定」と回答した企業は全体の39.9%を占めたものの、43.2%が「未定」、16.8%が「引き上げる予定なし」と回答。また、賃上げ予定と回答した企業の81.9%が「定期昇給」を考えており、「ベースアップ」との答えは19.8%にとどまっている。

(長田善行 久保田洋子 編集:北松克朗)

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