NOxとPMがなぜ人体や環境に悪いのか? NOxは、太陽からの紫外線を受け目や喉の痛みを伴う「光化学スモッグ」の原因物質をつくりだすことから悪影響がある。日本における光化学スモッグは1970年代に認知された公害の1つで、目まいや呼吸困難など障害を引き起こす要因とされた。
ちなみに、1966年にCO排出ガス規制が始まる前までの日本のガソリンエンジンは、ディーゼルエンジン以上のNOxを排出していたが、三元触媒によってガソリンエンジンから排出されるNOxのほとんどは除去されている。
PMは、DEP(ディーゼル排気ガス微粒子)とも言われ、成分は黒煙、SOF(有機溶剤可溶分)、硫酸塩などで、過去にはこれらが原因となり肺がんやアトピー性皮膚炎を促進させるとの研究結果もあがった。こうしたことからNOxとPMは、日本において1968年に大気汚染防止法が制定された保安基準で規制され、さらに1992年には自動車NOx法でも規制が強化されている。
こうした厳しい経過をたどる排出ガス規制のもと、現在販売されているディーゼルエンジンはどれもがクリーンな排出ガスが保たれたうえで、気持ちのいい走りを実現する。
トレードオフが発生するというジレンマ
ところでNOxとPMのうち、現在の排出ガス規制のなかで走行性能に大きな影響、つまり性能低下を招く規制はNOxだ。NOxの規制値を厳しくすれば環境には優しくなるがエンジンパフォーマンスは低下する。また、ディーゼルエンジンにおける排出ガスではNOxとPMはトレードオフの関係にあって、NOxを減らすとPMが増え、その逆も同じくトレードオフが発生するというジレンマも抱えている。
NOxとPMの両方を低減させつつ走行性能を確保するために、ディーゼルエンジンに対する電動化が進むとの見方もあり、メルセデス・ベンツは一時、日本市場でもSクラスにディーゼルハイブリッドモデルを用意しつつ、2019年のジュネーブモーターショー会場では最新のディーゼルエンジンとハイブリッドシステムを組み合わせた新しいパワートレーンを展示している。
ちなみに、商用車の世界では10年以上前からディーゼル・ハイブリッドは世界的に一定のシェアが確保されている。SCRシステムやDPFシステムで高価になることに加え電動化のコストがかかるわけだが、NOxの規制値をクリアしつつ高いパフォーマンスを保つための策として認められていて、現在も技術革新が続けられている。
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