菅と麻生、「安倍後」見据えた知られざる暗闘 「影の総理」菅義偉とは何者なのか(上)

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その2人が今、安倍の任期切れをにらんで激しい暗闘を繰り広げている。安倍を挟んで均衡を保ってきた両者が、「ポスト安倍」政権での生き残りをかけてしのぎを削っているのだ。

それでは、菅はなぜ「岸田潰し」にも血道をあげるのか。それは、「ポスト安倍」で、安倍と麻生の2人がそろって岸田を推す可能性を感じ取っているからだ。

安倍は第2次政権発足間もない頃から、自分の後は岸田を首相にしたいとの意向を漏らしてきた。その理由は単純で、自分に正面から盾突く石破茂を何としても首相の座に就けたくないからだ。安倍から見て石破に代わる次期総裁の最有力候補が岸田だった。

第2の理由は、岸田とは当選同期で、同じ二世議員同士でもあり、若い頃からの遊び仲間で気心が知れているからだ。安倍は首相を退任した後、出身派閥(現在の細田派)の領袖となり、政権に影響力を持つ立場でいわば「院政」を敷きたいと考えている。そうした安倍の願望を実現するうえで岸田はうってつけなのだ。そのため、安倍は親しい政界関係者に「岸田さんの人気が上がる方法を考えてほしい」とたびたび漏らしてきた。

麻生も「岸田首相」を有力と考えてきた

一方の麻生も、やはり岸田を有力候補と考えてきた。2人は元々同じ宏池会(旧宮沢派)の出身だ。麻生が宏池会本家=岸田派との合併による「大宏池会構想」を持ち掛けたのは3年前。岸田がそれを断ったことで構想は頓挫し、麻生は当時、岸田への不快感をあらわにした。だが、その後も2人は定期的に酒食を共にする。それは、麻生が次の総裁選で岸田を担ぐことを有力な選択肢として考えているからだ。

麻生派は一昨年、三木派以来の伝統派閥である山東派を吸収するなどして自民党内第2派閥に躍り出たが、同派に有力な後継者は見当たらない。派内には麻生の兄貴分で派閥の創設者である元総裁・河野洋平の長男・太郎がおり、2年前、外相に抜擢されたことで総裁候補とみなされるようにはなった。

だが、派閥活動にまったく関心を示さず麻生とも距離を置く河野太郎について、麻生は「もっと社会常識や礼儀作法を身につける必要があるな」と側近たちに言い放つ。菅が以前から河野に目をかけ、将来の首相候補だと公言していることも不愉快だ。そうなると麻生の選択肢は限られ、元同僚の岸田が有力候補として残る。

国会議員の勢力図だけを考えれば、党内最大派閥の細田派(安倍派)と第2派閥の麻生派、それに第4派閥の岸田派が組めば、それだけで党所属の衆参両院議員の過半数を超える。

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