Mr.ブレグジット「年内総選挙の可能性は50%」 労働党が単独過半数なら、株や為替は大打撃
――今後のブレグジットの展開で、もっとも可能性の高いシナリオは。
われわれは現在、「合意なき離脱」の可能性が30%、「合意ありの離脱」の可能性が40%、離脱が撤回される可能性が30%と予想している。依然として「合意ありの離脱」がもっとも高いと見るが、わずかの差だ。
マーケットの見方も同様だが、「合意なき離脱」の予想を強める一方、「合意ありの離脱」の可能性は低下したと見ている。明らかなのは、議会が選挙を通じて国民の信任を受けないことには、何も成し遂げられないということだ。
――もし、10月末に「合意なき離脱」となった場合、外国為替市場やデリバティブ市場などにどのような影響が出ますか。また、イギリスやEUの経済活動に与えるダメージはどうでしょうか。
それは双方(イギリスとEU)の準備態勢次第だ。そして、貿易や投資にとっての不確実性を低下させる対策いかんによる。
「合意なき離脱」の場合、われわれは当局の思慮深い対応によって、自由な貿易と金融サービスが短期的に継続するためのコンティンジェンシープラン(緊急時対応策)が土壇場で導入されると見込んでいる。
しかし、EUは依然として、ブレグジットが苦痛をもたらす出来事であるようにしたいと考えており、結果的にある程度の障害が表面化することになるだろう。イギリスは関税率の上昇やポンド安によって、企業投資の減少やインフレ上昇といった影響を被ることになる。
総選挙を経て国民投票なら「EU残留」へ
――内閣による自主解散か不信任決議案の可決によって、総選挙が行われる見込みはどれくらいありますか。また、2度目の国民投票の可能性や、これらが実施された場合の展開をどう予想しますか。
年内に総選挙が実施される可能性は50%と見ている。将来どこかの時点で2度目の国民投票が行われる可能性も同様の確率と考えているが、まず総選挙が先に来る。
もし総選挙となれば、労働党主導の政権へ交代することになりそうだ。自由民主党との連立政権ならば2度目の国民投票が実施され、「EU残留」となる可能性が高く、イギリスの資産にとってはポジティブな影響が見込まれる。
だが、もし労働党が単独過半数で政権を取った場合、イギリスの株式やポンドは大きな打撃を受けることになるだろう。
――合意の有無にかかわらず、EU離脱してもそれが最終ゴールではありません。イギリスはEUなどと新たな経済関係をどのように結ぶのでしょうか。ブレグジットに絡む不確実性はいつ払拭されるのでしょうか。
ブレグジットの問題は、それがすぐには止まらないことだ。どんな結末になるにせよ、それまでには今後何年も話し合いが行われる。
ブレグジットを最短で解決する方法は、国民投票でEU残留の結果が出ることだ。それ以外となると、EUや他の諸国との将来の通商協定の交渉で何年もの年月を要する。「合意なき離脱」の場合はやはり同じような交渉期間が必要となるが、イギリスとしては関税を引き下げるために合意を急ぐと見られ、交渉力は大きく低下することになるだろう。
――FXのストラテジストとして、大幅に減価したポンドの買い場をどう見ますか。日本の投資家がイギリスの資産に投資するタイミングはいつでしょうか。
現在はEUとの話し合いがどうなるかが見えず、グロ-バル経済の減速もイギリスに影響しているため、投資するときではない。ただし、議会が9月初めに夏休みから再開され、「合意なき離脱」を回避する方策がより明らかになってくれば、そのときが買いのタイミングだと考えている。
――ロンドンはブレグジット後も世界に冠たる金融センターとして競争力を維持できるのでしょうか。「合意なき離脱」となれば、ロンドンやイギリス内に拠点を置く金融機関はどう動くのでしょうか。
ロンドンは、そこに拠点を置く金融機関の強さや人材を引き付ける力、規模の経済、労働市場の柔軟性、法の支配、時間帯の優位性、さらには他のEU諸国が信頼するクオリティーといった理由から、グローバルな金融センターの地位を維持すると思われる。
ただし、「合意なき離脱」となれば、金融サービス業に対する一定の打撃は避けられず、緊急時対応策が発動されることになるだろう。
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