「何もしない」を職業にした35歳男の豊かな人生 「レンタルなんもしない人」が親しまれる理由

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「大喜利は見てる人からの評価で面白いかどうかが決まるので、自信がないからこそ順位をつけてもらったり、他者評価に委ねていた。でも今はニーチェの価値観に触れて、人がどう思うかより自分で面白いと思うかどうかを優先するようになりました。例えば、レンタルなんもしない人では“レンタル料を貰っていない”と僕が言うと、“飯のタネにならないことをしてなんの得があるの?”という人が絶対にいます。でも、僕が面白いと思ってやっているんだから、それでいいんです」

根拠のない自信に支えられ、自分の面白いを貫き、レンタルさんは「レンタルなんもしない人」という職業を誰よりも楽しんでいた。ちなみに妻と出会ったのも大喜利のオフ会だという。

「オフ会で話したら、妻はたまたま自分が通っていた大学の職員だったので、大喜利という狭い世界でこんな偶然もなかなかないなと。妻は今、イラストレーターとして働いているのですが、ぼくの仕事にも理解を示してくれているので感謝しています」

「依頼者の正解」であればそれでいい

現在、1歳となる子どもと妻との3人暮らし。共働きではあるものの、無償の「レンタルなんもしない人」を続けるレンタルさん一家は、どうやって生活しているのだろう。

「会社員時代の貯金を取り崩して今は生活しています。最近は本の発売やメディアの出演もありますし、レンタル業は交通費だけお願いしていますが、別途でいただける場合はお断りしていません」

「たまに「お金を受け取ってほしい」との依頼でお金をもらう。支援的な意味のものも多いけど、「無駄使い欲を発散したい」「ギフト券を送る練習がしたい」「預金残高の端数(下4桁)が鬱陶しい」という理由や「ふと」というのもある。こういうバリエーションは料金とってたら発生しなかったろうなと思う」(レンタルさんのツイートより引用・原文ママ)

まるで、寺社における「お気持ち」代に似たような感覚だろうか。依頼者によっては、レンタルさんを「教会」「懺悔室」と捉えている人もいるという。

「『空調』『壁』『王様の耳はロバの耳』……ときには『ただの乞食』『新手のヒモ』とか言われることもあります。とある番組で、ふかわりょうさんに『面白い船の集まる港』と言ってもらえたのはうれしかったですね」

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